障害者スポーツ 陸上競技で共生目指し

知的障害のある人にスポーツの場を提供し、社会参加を支援するスペシャルオリンピックス(SO)の活動の一つとして、学校の部活動のようなスポーツプログラムがある。松本市宮渕の鈴木英子さん(50)は、同市を拠点とした陸上競技プログラムを始めた。
1998年にSO日本・長野が設立されて20年余。プログラムは、特別支援学校卒業後の余暇活動としての役割も果たしてきたが、これまで参加してきたアスリート(選手)の年齢が高くなり、新規参加を増やしたいという課題も生まれている。
2020年の東京パラリンピックが近づく中、鈴木さんは「障害者スポーツ全体を盛り上げ、SOの活動も知ってもらい、健常者と障害者の共生社会を目指したい」と走り出した。

SO陸上競技プログラム 松本市 鈴木英子さん

スペシャルオリンピックス(SO)の陸上競技プログラムは鈴木英子さんを代表に、鈴木さんの夫雅也さん(51)、松本市出身の会社員、中村優里さん(27、伊那市)、松本養護学校の伊藤拓哉教諭の3人がコーチ。アスリートは10代後半の男子5人が所属し、月1、2回の練習をしている。
8月31日の練習は、松本市岡田松岡の市陸上競技練習場で行った。鈴木さんの指導で、ストレッチ、ウオームアップなどをしてから、400メートルトラックに出て、全員でジョギング。その後、アスリートは400メートル、800メートル、1500メートルの記録を計測した。
この日の練習場は、中学、高校などの多くの陸上部が練習をしており、特にトラックは混雑。鈴木さんらは、他の学生らの邪魔にならないように、配慮するような場面もあった。
アスリートの1人で、県松本養護学校高等部時代に、陸上の県障がい者スポーツ大会1500メートルで3年連続優勝した山田勇佑さん(18、松本市渚)は、炎天下での約2時間の練習を終えてぐったり。それでも陸上は「楽しい」といい、「1500メートルで5分を切るのが目標」と力強く話した。
練習にはアスリートの保護者も訪れて、一生懸命走る息子たちに声援を送った。陸上競技プログラムが始まったことについて「特別支援学校には部活がなく、授業も体力づくり程度。ここはやりがいがあり、仲間に会える居場所になる」と歓迎する。

鈴木英子さんは、息子の克将さん(17)が県松本養護学校中学部時代の一昨年、PTA会長を務めた。その中で保護者から聞こえてきたのは「卒業後の余暇活動の場がない」「同じ境遇の仲間と会う機会がない」だった。
こうした声を受け、「走るのはすべての基本になる」と、自身も学生時代に経験のある陸上プログラムを始めることを決めた。今春、SOのコーチクリニックを受講し、コーチ役を集めるなど体制を整えた。
ボランティアでコーチを務める中村さんは約10年前、障害のあった兄が19歳で亡くなった。生前は楽団に所属しており、中村さんは「兄も地域の人に支えられた。人前に出ることや発表の場があることは大事なことで、ここの子どもたちも陸上を楽しみ、地域とのつながりができれば」と温かく見守る。

スペシャルオリンピックス日本・長野事務局(長野市)によると、長野五輪を機に設立したこの団体は、20年以上たち、県内の既存のプログラムに所属するアスリートが年齢を重ね、新規の若い人が入りづらくなっているのが課題という。太田かおり事務局長は「松本では2、3年前に卓球が始まり、今回は陸上。新たなプログラムが始まると全体の活性化につながる。多くの人に参加を呼びかけてほしい」と期待している。
鈴木さんは「来年、東京パラリンピックが開かれ、障害者スポーツに注目は集まるが、一過性に終わる可能性もある」とする。その上で、「松本には陸上の障害者専用の施設はないが、これは逆に多くの人に自分たちの活動を知ってもらうことにもなる。将来的には健常者と一緒に同じ練習ができるようになれば」とこれからに期待する。

【スペシャルオリンピックス(SO)】
知的障害のある人にスポーツプログラムと呼ばれるさまざまな競技のトレーニングと、その成果の発表の場となる競技会を提供する国際的なスポーツ組織。スペシャルオリンピックス日本・長野は1998年に設立。2005年に第8回冬季世界大会が長野県で開催された。現在、県内で行われているスポーツプログラムは15競技で、松本を拠点にしている競技は陸上競技を含め、競泳、卓球、バスケットボール、フロアホッケーの5競技。問い合わせはSO日本・長野事務局 電話 026・225・1550
(浜秋彦)


投稿者: mgpress