会えたらハッピー?“かぶりものおじさん”

スイカ、トウモロコシ、牛乳パン…。さまざまなかぶりもので松本の街角などに出没する、ちょびっと「怪しい」おじさん。急に出くわし、ぎょっとした人もいるのでは。その正体は「かぶりものファッションモデルアーティスト」「天才被(かぶ)りモノ王子」などを自称するあんころもちけいいちさん(50、諏訪市)だ。
「シャイで自分のことを話すのが苦手」という安藤圭一さん(本名)がかぶりものを身に着けると、「あんころもちけいいち」に変身。「あんころハッピー!」と陽気に語りかけ、初めて会う人や通りすがりの人とも気軽に写真を撮ったり会話したりする。
かぶりものの数は50種類以上。「みんなに笑顔になってもらうのが好き」と話すあんころもちさんにとって、かぶりものとは―。

松本などで活動 あんころもちけいいちさん
決めぜりふに思い込めて

はじまりは婚活の手段
4年前に失恋した。「この年で閉じこもっていてもだめだ」「自分をアピールする方法を見つけなくては」。いわば婚活の手段として、あんころもちけいいちさんが思い付いたのがコスプレだった。
婚活狙いで始めたコスプレに徐々にはまっていった。かぶりもの熱はますますエスカレート。2015年に開かれた東京のクラブのハロウィーン仮装コンテストでは、便器のかぶりものにトイレットペーパーを全身に巻き付けた姿で優勝。その姿で渋谷に立っていると、いろいろな人に声をかけられ、写真撮影も求められた。「コスプレしていないとありえない状況。ヒーロー、スターになった気分だった」と振り返る。
「地域コミュニティTsunagu─ツナグ」を主宰し、人と人をつなぐイベントなどを企画している大月智子さん(36、塩尻市広丘吉田)と知り合ったのを機に、「活動」の拠点を松本に据えた。
松本市街地を中心に出没するのは、松本が好きだから。「松本は歩いて楽しい町。とっても気に入っている」。ただ、生まれ育った諏訪地方ではやっぱりやりにくい─との「本音」もチラリ。
「あんころもち」は以前の職場の同僚に付けられたあだ名で、自身も大いに気に入っている。SNS(会員制交流サイト)上には、ファンクラブ「あんころぶ」があり、会員数はなんと約70人!
「独自のファッションセンスは唯一無二。穏やかで仲間思いで、イベントを一緒になって盛り上げてくれるなど人望も厚い」と、数少ない(?)理解者の大月さん。「派手な外見と思いやりに満ちた性格とのギャップが、人気の秘密」と話す。

仕事を辞め「活動」に力

かぶりものは、インターネットの通販サイトを利用して入手している。果物の形など既製品を買うこともあるが、「松本らしさ」「長野県らしさ」にこだわりたい時は特注することもあるという。牛乳パンやトウモロコシなど食べ物以外にも、土管、露天風呂、牧場(あんころ牧場)…。コレクション数は増える一方だ。
「来年は全国の人に知ってもらえるよう、テレビ、雑誌に出る」「2年後にはかぶりものをして世界中を歩いている」。あんころもちさんの未来日記にはそう記してある。それを現実にしようと今年2月、仕事を辞めた。既製品で5000円以上、特注だと4万円もするというかぶりもの代や生活費は、アルバイトで賄っている。
「たくさんの友人が松本にいるし、多くの人に支えられ、応援してもらっている」とあんころもちさん。「あんころハッピー!」の決めぜりふは「街角で僕と出会うといいことあるよ。ハッピーの輪がどんどん広がり、笑顔に、楽しくなるよ」との思いを込めた。「有名になって、もっともっと松本に恩返ししたい」と力を込める。
9月15日、イオン南松本店で開いた「しあわせバイ信州」のイベント。あんころもちさんは、ナガノパープルやシャインマスカット風のかぶりものと衣装で登場、ブドウやリンゴなど県の特産品PRに一役買った。奇抜な格好に驚く人もいるが、その笑顔に誘われ、駆け寄り、一緒に写真を撮る子どもも。穏やかな雰囲気は周囲を和やかにし、温かな空間をつくりだす。
サンプロアルウィンでは緑色のサッカーボール、そば祭りには天ぷらそば―。TPOに合わせたかぶりもので登場するあんころもちさん。出会ったら「あんころハッピー!」と声を掛けてみてはいかが。

(八代けい子)


投稿者: mgpress