有明山の「幻の滝」紅葉と共演(安曇野市)

大雨で有明山の断崖に現れた「幻の滝」。紅葉の彩りと流れる雲が風情を添える=ニコンD5 ニコンAF-Sニッコール1200ミリ、安曇野市穂高有明

気まぐれに現る 昇天する雲竜

地域住民が「信濃富士」と呼んで愛する、安曇野市と松川村にまたがる有明山(2268・3メートル)。大雨の後、その山腹には「幻の滝」が現れるという。
台風20号から変わった温帯低気圧の影響で多量の雨が降った10月22日午後。紅葉真っ盛りの山肌に、雲の間から一瞬、白い筋が見えた。直線距離で6キロほど先。1200ミリの超望遠レンズで、この気まぐれな滝の姿を捉えた。
気付いたのは、同市穂高有明の会田仁さん(70)。場所は南斜面の標高1600メートル付近の断崖で、かつて修験者が登った「深沢」と呼ばれる難所だ。雲間に見え隠れする上段の滝は一筋で豪快。下段は二筋に分かれ、真綿を引き延ばしたように白く光って見えた。滝の落ち口が時々雲の中に隠れる。その幽玄な雰囲気は、雲に乗って昇天する「雲竜」のよう。
有明山の山頂周辺に降った大量の雨が集まり、短時間で一気に流れる。このため、滝は山を覆う雨雲に隠れがち。観望ポイントも限られる。「先人たちから『幻の滝』の存在を聞いてはいたが、初めて撮影できてうれしいです」。滝出現の情報を友人から聞き、動画撮影に駆け付けた穂高牧の寺島一夫さん(67)は声を弾ませた。
この滝は、上下同時に仲良く現れ、消えるのも一緒。その風情から、「夫婦滝」または「有明夫婦滝」とも呼ばれている。
(丸山祥司)