段ボールで本物そっくり ミュージシャンのギターを再現

扉を開けると、3本のエレキギターが目に飛び込んできた。その横には、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、そしてリンゴ・スターの肖像画が並ぶ。まさか、ビートルズのメンバーが使っていたものと同モデルのギターが一堂に?
近づいていくと、なにやら様子が変だ。よくよく見ると、ギターは何と段ボール!手に取ると拍子抜けするほど軽い。だが、握ったネックの丸みはまさにギター。弾くまねをすると、わくわく感が押し寄せる。
その場所は諏訪市内のカフェ。「段ボールに、ここまで心揺さぶられるとは」。顔を上げると、ギターを作った滝澤テイジさん(松本市)と、肖像画を描いたフランソワーズさん(同)が「してやったり」と言わんばかりの表情でほほ笑んでいた。

真剣に遊ぶ大人2人の文化祭

滝澤テイジさん・フランソワーズさん 松本市

してやられた店は、中央道諏訪インターチェンジからほど近い「ブルーラインガレージカフェ18」。松本地方のクラフト作家やミュージシャンも、展示やライブに利用する。
ここで開かれているのが、デザイナーを軸にさまざまな活動をしている滝澤テイジ(本名・貞二)さんとフランソワーズ(本名・小笠原志津子)さんの2人展「図画工作室文化祭」。テイジさんは段ボールで作ったエレキギターなど、フランソワーズさんは大好きなミュージシャンの肖像画や建物などの絵を展示している。
段ボールのギターは原寸大。テイジさんが敬愛する英国のロックミュージシャン、ジョー・ストラマー(ザ・クラッシュ)が愛用した1966年製の「フェンダー・テレキャスター」は、ボディーの塗装のはげ方などが忠実に再現されている。
細部へのこだわりはほかにも。ポール・マッカートニーのベースギターにはセットリスト(演奏曲の一覧)が張られている。スティーブ・ジョーンズ(セックス・ピストルズ)愛用の「ギブソン・レスポール・カスタム」には、ピックガードを取り外してできた穴がきちんと開いている。
特に、2年前に作ったテレキャスターと今年の新作レスポールは凝りに凝っている。音量や音の明るさを調整するコントロールノブが回り、ピックアップセレクターは上下に動く。弦の張りを調節するペグやストラップ・ピンは取り外し可能。レスポールに至ってはネックやピックアップなどのパーツが段ボールで作ったネジで固定してあり、分解できる。
「展示会に合わせて新しい弦に張り替えてきた」と大まじめのテイジさん。弦は紙ひもを裂いたものをよって作り、6本とも太さが違う。その情熱に恐れ入るしかない。
フランソワーズさんの絵からも、音楽への愛情がひしひしと伝わる。肖像画はトム・ヨーク(レディオヘッド)やシド・バレット(ピンクフロイド)ら英国のロックスターを中心に、米国の画家バスキア、俳優のエイドリアン・ブロディなど。
実際に旅した米国ロサンゼルスのパサデナやメルローズ通りなどをモチーフにした「音楽が聞こえる街シリーズ」や、「こんなアパートに住みたい」という自身の願望を形にした「アパートメントシリーズ」も、カラフルな色づかいや軽やかな曲線が楽しい。

二人とも本業はデザイナーだが、テイジさんは照明など舞台の裏方や写真撮影などを手掛け、フランソワーズさんは絵や音楽活動をしている。
フランソワーズさんの音楽イベントをテイジさんが手伝う、という間柄だった。「テイジさんのギターを生で見てほしいし、テイジさんがデザインしたイベントチラシも知ってほしい」と願うフランソワーズさんが、テイジさんを誘って今展を企画した。
コンセプトは“2人の美術部員”が作りたいものを気楽に作り、見てもらう「文化祭」。作品から伝わる「真剣に遊ぶ大人の姿」が、見る側の気持ちを温める。
テイジさんは他の楽器を段ボールで制作する意欲を見せ、フランソワーズさんも肖像画を60枚ほど描きためたい考え。「数が増えていくと、もっといい展示になる。毎年続けたいし、松本でもお披露目できたら」と目を輝かせた。
展示は18日まで。ギターは手に取っていいものとそうでないものがある。午前11時~午後10時。日曜定休。同店 電話 0266・78・6270

(松尾尚久)


投稿者: mgpress