大町出身プロ山岳ランナー上田瑠偉さん 「最終戦」で逆転SWS世界王者に

欧米で人気の「スカイランニング」。空気の薄い2000メートル以上の高地で、標高差1000メートル以上を走って登る過酷なレースだ。
その世界最高峰、スカイランナー・ワールド・シリーズ(SWS)で快挙を成し遂げた大町市出身のプロ山岳ランナー、上田瑠偉さん(26、さいたま市、コロンビアスポーツウェアジャパン所属)。総合ランキング2位で臨んだ最終戦(10月19日、イタリア)で勝利し年間獲得ポイントで逆転、栄冠に輝いた。
SWSの世界で、日本の先駆者として新たな道を切り開いた上田さん。来年は、さらなる高みを目指してフランスに移住する。
「子どもたちが、自分の背中を見て、この競技に夢を抱いてもらえたら」という世界王者に、今後の展望などを聞いた。

フランスへ移住新たな道を

─世界王者になった。率直な感想は
シーズン前、足の痛みもあり、こんなに戦えるとは思っていなかったし、目標を年間5位にしていたので今も実感はない。このシリーズ戦で昨季まで勝ったことがなく、開幕戦(4月、新潟県三条市)で優勝できたのは自信になった。さらに6月のイタリアでの2戦目で連勝できたのが大きかった。この2つのレースを勝ったことで自分の勝ちパターンがちょっとずつ見えてきた。得意の登りで貯金をつくって、そのまま逃げ切るというスタイルだ。この後、7月の2大会で3、4位になって年間優勝を狙う気持ちが出てきた。
─最終戦はどんなレースだったか
勝って終わりたいと思っていた。コースは27キロで、1000メートルを登る坂が3つあった。2回目の登りから攻めようと思っていたが、ペースが遅かったので、最初から先頭に立った。3回目の登り始めでも体力的に余裕がありどんどん攻めた。しかし、最後の下りで総合1位の選手に抜かれた。それまで完璧なレースだったので、「これで負けたらしょうがない」と一瞬、諦めかけたが、ゴール前約2キロのところに小さなアップダウンがあり、なんとかそこで抜き返せた。
─今季、一番苦しかった場面は
7月まで調子良くきていて、8月に以前にもけがをした右膝が悪くなった時だ。もし靱帯(じんたい)が痛んでいたら、シーズンを棒に振ったかもしれないし、手術の可能性もあった。結果的に大きなけがではなかったが、診断が出るまでは精神的にきつかった。
─成長した点は
自信を持ってレースに臨めるようになった。これまでは「海外選手は強い」という固定概念があり、自分は登りが強みでも、ただ付いていくだけで、前に出られなかった。今年はどんどん前に出るのが自分のスタイルだと気付き、それで勝てるようになった。登りが「強み」から自分の「武器」になった。
─来年からフランスに移住するが
競技に専念するという以外に、生きざまとして、新しいことへの挑戦だ。サッカーだったら、セリエAなどに挑戦する日本人はいるが、この競技で海外に出る日本人はまだいない。自分が新しい道を切り開きたい。
─今後の目標は
まずは来年7月にスペインで開かれる2年に一度の世界選手権に照準を合わせる。今回の総合優勝で優勝候補に挙がってくるとは思うが、この競技はいろんな種目があり、例えば、2016年と18年の世界選手権の優勝者は、今季は違う種目に挑戦していて、このシリーズ戦には出ていない。そういうことを考えると、強豪はまだまだいてメダル獲得が目標になる。SWSの連覇も狙いたい。
─マラソンに興味は
実は、来年1月の茨城県での大会にエントリーしていてそこで2時間20分くらいを目指したい。でも自分のやっている競技とマラソンは別物。時速20キロで2時間はもたない。もし挑戦するとしても、この競技を知ってもらうため。こちらの方が楽しいから、マラソン転向はないと思うが。
─地元の子どもたちに一言
海外のレースに出始めたのが2015年ごろからだが、最初はうまくいかなかった。失敗から多くを学び、ようやく今年、慣れてきたところだ。一度駄目だからといってそこで諦めるのではなく、何回も何回もたたき続ければ壁は破れる─ということを自分の姿を見て知ってほしい。

【メモ】スカイランニング 森や山中など未舗装の道を走るスポーツ「トレイルランニング」の一つ。標高2000メートル以上、標高差1000メートル以上の山岳コースで行われることが多く、坂を上り下りする技術も勝敗を左右する。SWSは世界11カ国で年間16戦開催。各レースの順位をポイント換算し総合順位を競う。

【プロフィル】うえだ・るい 大町市仁科台中から佐久長聖高(佐久市)に進み、駅伝部に所属。主将を務めた3年時の全国大会で同校は過去最低の21位。進学した早稲田大では陸上競技同好会に所属。2年時に出場した100キロを走る大会で5位入賞し、現在の所属企業にスカウトされトレイルランニングの道へ。社会人1年目の2016年、スカイランニングの世界選手権複合種目で2位、U-23(23歳以下)世界選手権で優勝した。169センチ、59キロ。
(浜秋彦)