県小児科医会副会長 松岡小児科医院・松岡高史院長に聞く―百日ぜき急増対応策は

ワクチン接種と社会全体で防ぐ意識

せきが治まるまで100日はかかるという「百日ぜき」。松本保健所管内で今年、昨年の約7倍の45件、県全体では前年比3倍超の304件(ともに11月28日現在)発生し、10月には安曇野市内の小学校で学級閉鎖が出るなど、主に子どもたちの間で広まっている。感染症に詳しい県小児科医会副会長で松岡小児科医院(松本市芳野)の松岡高史院長(63)に、百日ぜき急増の原因と今後の見通し、対応策などを聞いた。
百日ぜきとは、「百日ぜき菌」を原因とする急性の気道感染症。主にせきやくしゃみなどで飛沫(ひまつ)感染する。1歳以下は重症化しやすい。特に生後6カ月未満は、死亡率も高く、注意が必要だ。
感染期間はインフルエンザが1~10日に対し、百日ぜきは5~35日と長い。国立感染症研究所による「基本再生産数」(免疫を持たない人の集団の中に、感染者が1人入った時、何人感染するかを表した数)は、インフルエンザが2~3人に対し、百日ぜきは16~21人と、感染力が強いのが特徴だ。
約7~10日の潜伏期の後、風邪のような症状が続く。「コンコン」と強くせき込んだ後に、ヒューという笛のような音を立てて息を吸う特有のせきが出る。たんを吐き出し、せきが治まる。これが百日ぜきの典型的な症状だ。
しかし近年は、ワクチン接種の効果で、発病しても症状が軽い人が多い。笛声を伴うような典型的な症状がほとんど見られなくなった。よって、せきは長引くが、軽い風邪だと思い込んだ百日ぜきの患者が受診せず、その間に感染が拡大してしまう可能性がある。

松本保健所管内の百日ぜき発生状況=グラフ=によると、昨年に比べ、急激に患者が増えている。しかし、これは百日ぜきが今年、同管内で大流行したわけではなく、県への届け出数が大幅に増えたことが大きな要因とみている。
百日ぜきは、感染症法でこれまで定点把握疾患に分類され、全国の小児科定点から報告を受けていたが、昨年1月から検査診断をした全ての医師が届け出をしなければならない「全数把握疾患」に変更された。これははしかや風疹と同じで、百日ぜきも全数報告する病気として認知されたということだ。
もう一つ、急増の原因として診断技術の向上が挙げられる。これまで百日ぜきの診断は、血液検査による血清診断が主だったが、複数回血液を採取しなければならず、診断にも時間がかかった。だが、この1年余で、より簡単で迅速に百日ぜきの確定診断ができる「遺伝子検査」が普及。患者にとっては気軽に検査ができ、診断も容易になった。全数報告の実施とも合わせ、この1年で急激に患者数が増えたのではないかと推測する。

気を付けなけれならないのは、百日ぜきのワクチンを接種したにもかかわらず、抗体の低い年齢層、つまり、感染しやすい年代がここ数年目立ってきたという点だ。
2018年度感染症流行予測調査(国立感染症研究所)による年齢別抗体保有状況をみると、成人の抗体保有率50~80%と比べ、7~12歳は50%以下、9歳は30%未満と、低いことが分かった。
現在、四種混合ワクチンで0歳代に3回、1歳代に1回、定期予防接種をしているが、免疫効果は4~12年で弱まる傾向がある。日本小児科学会などは、対策として就学前にワクチンの追加接種(任意)を推奨している。
最も大事なことは、ワクチンをまだ接種し終わっていない1歳前の子どもたちに百日ぜきをうつさないことだ。特に生後6カ月未満の赤ちゃんは感染すると呼吸困難や肺炎を併発し、死亡率も高まる。抗体のある大人は発症しても症状が軽い。小さな命を守るため、社会全体で感染拡大を防ぐことが重要だ。
治療は、発症早期に抗菌薬の投与が有効。予防は、ワクチン接種で百日ぜきにかかるリスクを80~85%減らすことができるといわれている。せきが長引く場合は感染を疑い、早めの受診を。手洗いの徹底やマスク着用も忘れずに。

(高山佳晃)


投稿者: mgpress