白骨温泉の「宝」新たな評価に光

特別天然記念物に指定
白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石
分布域、国内最大級に

怪しげな響きも相まって秘湯好きを引き付けてきた松本市安曇の白骨温泉。温泉に含まれる炭酸カルシウムが地表面に湧き出して層をなす「石灰華」(せっかいか)が堆積した噴湯丘が、旅館の中庭にも広がる。
国の特別天然記念物「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」。11月に約6.1ヘクタールが追加指定答申を受け、石灰華の分布域が東京ドーム3個分に当たる約14.3ヘクタールに広がった。北海道長万部(おしゃまんべ)町にある二股温泉の約8ヘクタールを上回り、まとまって見ることができる場所としては国内最大級だ。
温泉が作った「自然の造形」に加わった新たな評価。近年の入り込み客減に悩む白骨温泉の関係者は、そこに活性化への希望の光を見いだそうとしている。

保存と活用、両輪でつなげて
「白骨ブランド」再構築

「石灰華のことを地元では“白骨石(しらほねいし)”と言います。私たちの足元はすべて温泉水が固まった大地。特別天然記念物は国宝と同じ価値がある。規模も日本一と証明されて誇らしい」
そう話すのは「かつらの湯丸永旅館」社長の筒木隆雄さん(62)だ。
石灰華が円すい状に堆積する「噴湯丘」、石粒などの周りに石灰華の膜ができて厚みを増した「球状石灰石」。筒木さんの旅館には噴湯丘と球状石灰石が両方あり、これまでも宿泊客に見せてきた。噴湯丘は中庭の約30平方メートル。球状石灰石は先代まで押し入れに保管していたものを筒木さんが「大勢の人に知ってほしい」と約40年前から館内に展示した。
中庭に案内してもらうと、さまざまな形の噴湯丘が目に飛び込んできた。こけむした岩が並んで立っているよう。所々に温泉水が噴出していたとされる穴が見える。「亡くなった父から『幼い頃は蒸気が出ていた』と聞いたことがある」という。
以前から地域資源を観光に生かしたいと考えてきた筒木さん。白骨温泉の源泉掛け流しの風呂でも日々、炭酸カルシウムの結晶(石灰華)が生じているとし、「噴湯丘という長い年月をかけてできた産物と、浴槽にできる石灰華という現在進行形のものの両方の希少性に興味を持ってもらえれば」と期待する。
小梨平地区の丸永旅館から車で5分ほどの重小屋地区。林の中の一帯にある噴湯丘は、同じようにコケに覆われているが、より深さがあり複雑に入り組んでいる。冬季は樹木の葉が落ち全体を見渡せるが、夏季は葉が茂り外からは見えないようだ。
噴湯丘自体がとても珍しいのに加え、まとまってみられる貴重さが白骨温泉の特徴。だが、その成り立ちや本質的な価値はすぐに理解しづらい面もある。
噴湯丘と球状石灰石は1922(大正11)年に国天然記念物に、52(昭和27)年には特別天然記念物に指定された。旧安曇村は見学地や散策路、説明板などを設置したが、現在は老朽化。重小屋地区に立つ説明看板も古めかしい。
市教委は本年度中に保存活用計画の中で方向性を示し、具体的な施策については来年度以降に検討する方針。市文化財課西部4地区担当の臼井邦彦課長は「文化財を地域振興に役立ててもらうことで皆の関心や興味が向かい保存にもつながる。保存と活用がうまく両輪でつながっていけばいい」と話す。

白骨温泉は、旅行サイト「じゃらんnet」を運営するリクルートライフスタイル(東京)が昨年行ったアンケートで、全国温泉地満足度ランキングで「総合満足度」が2位となった。一方、市山岳観光課によると、入り込み客数は合併後のピークだった2007年の30万5300人から、18年は21万9500人まで減少している。
「訪れた人が見て納得できるようなビューポイントにしていくことが大切」。白骨温泉旅館組合の斎藤志津人理事長(69)はそう述べ、「白骨ブランド」の再構築に向けて今回の追加指定を「どう活用していくか、これから具体的に検討していきたい」としている。

(井出順子)


投稿者: mgpress