SNSで評判のスイーツ

松本市梓川にある6畳の工房。「KOTO米Sweet(コトスイーツ)」佐藤琴美さん(35)が菓子作りに使うラボラトリー(実験室)だ。
お菓子の3大素材は卵、乳製品、小麦粉。これらのアレルギーを持つ人や、動物由来の製品をすべて避けるビーガン(完全菜食主義者)にとっては禁物の素材をまったく使わず、おいしいスイーツを作れたら…。
佐藤さんは米粉を主原料に、工房でビーガンスイーツ作りに取り組んでいる。自信作の「ヴィーガンチーズケーキ」をいただく。「チーズは使わず、豆腐がメインなんです」。聞いて驚き、味わってまた驚く。
常設の店は持たず、販売も不定期。それでも、評判はSNSや口コミを通じて、誰もが味わえるスイーツを求める人たちに広がっている。

コトスイーツ 佐藤琴美さん
松本市

「体は食から」おいしく健康に

松本市梓川の佐藤琴美さん宅に隣接するコトスイーツの工房前。朝10時の開店を前に次々と客が訪れ、30人ほどが列を作った。
栗、カボチャ、ブドウ、リンゴなど、秋の恵みをふんだんに使ったケーキやタルトのほか、定番の「信州味噌(みそ)くるみマフィン」(280円)、「おにぎりちゃんクッキー」(250円)など全25種類がずらりと並んだ。待ちかねた客が次々とかごに入れて買い求める。
小麦と卵のアレルギーがある3歳の娘と訪れた嶋由依さん(32、安曇野市)は「米粉はパサパサしたイメージがあるけれど、ここのはどれもおいしい」。グルテン(小麦粉に含まれるたんぱく質)が気になるという武藤ゆう子さん(44、塩尻市)は「子どもにはちゃんとしたものを食べさせたい。松本ではなかなか手に入らないからありがたい」と、菓子を買い求めた。

佐藤さんが原材料にこだわった菓子作りを始めたのは、長男(11)が乳児の頃のアトピー性皮膚炎がきっかけ。かゆくてかきむしり、泣き叫ぶ息子の姿に心を痛め、県内の皮膚科を回ったが、因果関係など分からないことだらけ。都内まで通ってたどり着いた答えが「食べたもので体はできている」との考え方だった。
以降、添加物は徹底的に除き、だしを丁寧に取り、おやつも手作りするように。栄養士の資格を取るなど、元々食への関心は高く、「小学生の頃から菓子作りが好きで、パティシエになりたいと思っていた」佐藤さんの気持ちに火が付いた。
「米粉マイスター」「ロースイーツ(低温加熱で酵素を失わない製法)パティシエ」の資格も取得。昨年10月に工房を建て、本格的に菓子作りを始めた。小麦粉の代わりに原材料のメインとしたのは国産米粉。だが、米粉で菓子を作るのは難しく、特にクッキーやスコーンでは硬くなりやすい。菓子ごとに調整を繰り返し、他の材料と合う配合を見つけ、課題を一つずつクリアしていった。
油は米油、最高級といわれるコールドプレスの菜種油、ココナツオイルを使用。甘味料はきび砂糖、メープルシロップなど天然のものを使い分ける。生クリームの代わりは豆乳ホイップ。「ヴィーガンチーズケーキ」(500円)などは健康志向の人だけでなく幅広い人気がある。
販売ルートは月1、2回のペースで行うイベント出店と工房の開放、季節ごとに菓子の詰め合わせを全国に発送する「定期便」。インスタグラムのフォロワーも2300人を超える。今年は都内で開かれたビーガングルメ祭りにも初出店。健康意識の高い客と接し、好評だったことでさらに自信を深めた。

一方、「子どもとの時間を大切にしたい」と常設店を持たないスタイルにしたのに、忙しくなると深夜まで1人で工房にこもり「子どもをほったらかすことも」(佐藤さん)。素材にこだわればこだわるほど、コストもかかる。時間の使い方や採算にジレンマを抱えながらの菓子作りだが、開業資金を捻出してくれた夫や同居する父など家族の協力が支えになっている。
今年は、自宅裏の1反の田で無農薬米の栽培にも挑戦。手間を掛けて育てた米をマフィンに使い、手応えを得た。「来年はパンや菓子の教室も開いてみたい」と意欲的だ。
年内の一般販売は終わったが、年明けにマフィンなどの菓子を詰め合わせた「お正月セット」を、西暦にちなみ2020円で販売する予定。
(佐竹伸子)


投稿者: mgpress