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松本市安曇で活動「BRIDGE」 故郷を離れた若者呼び戻す懸け橋に

若者主導地域振興に新たな形
若者コミュニティBRIDGE 松本市安曇

高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が40・3%の松本市安曇地区。進学などのため、一度は故郷を離れた若者たちが地元に戻り、交流拡大や地域振興に知恵を絞り、体を動かしている。
「若者コミュニティBRIDGE(ブリッジ)」。30歳前後の大野川小中学校卒業生らで活動している。「人をつなぎ(学び)、地域をつなぎ(成長し)、そして未来をつなぐ(共有する)」がモットーだ。
廃れていた地元の祭りを人気イベントにプロデュースするなど、自分たちが「楽しい」と思えることを発展させていくのが「地域づくり」につながる―。そう信じて、自分たちが懸け橋となり、地元に戻りたいと考えている若者を導けるような道をつくろうとしている。

主役は地域住民研究者らも注目

「若者コミュニティBRIDGE(ブリッジ)」を主宰する奥田賢さん(29、松本市安曇)は、家族経営する温泉宿の仕事のほか、競技スキーのコーチも務める。広報宣伝部長の宮下祐介さん(32、同)も同様に、家族経営するバウムクーヘン店で職人をしながらの活動だ。
ブリッジは、安曇地区の沢渡町会から依頼を受け、2015年から共催団体として加わった祭り「お月見会」から活動を本格化。毎年9月に開いてきた恒例行事だが、関わる前の来場者はわずか20人ほど。町会では「もうやめようか」との声も出ていたという。
奥田さんは「義務感だけで開くのは単なる『悪習慣』。主催者も楽しめる内容にすればいい」と考え、プロデュースに知恵を絞った。「主役は地元の人」をコンセプトに、輪投げなどの露店のほかステージを企画。地元出身の歌手や、昨年は初めて「浅間温泉火焔(かえん)太鼓保存会」の出演も。雨天にもかかわらず、来場者は地元の人を中心に約300人と盛況だった。
「最初は『どんどん客を増やそう』と躍起になった時期もあったが、それでは地域の人がついてこなかった」と宮下さん。メンバーらで話し合い、行動指針を「地域住民が充実した生活を送ることを目指す」に決めた。
移住者の出店サポートをしたり、民間のイベント会社と共催したトレイルラン大会も開催。自治体の枠を超え、飛騨高山地区(岐阜県)と共同製作する「温泉マップ」も今年3月の完成を目指して進行中だ。
活動内容が地域外にも広まるにつれ、公民館などの会合に呼ばれて講演する機会も増えた。講演を聞いた市内の城北公民館の田中正館長(66)は「高齢化が進む安曇で、若いブリッジの活動は可能性を感じる。他の地区とも連携して盛り上げてほしい」と話す。
ブリッジの活動に興味を持った東京大大学院の牧野篤教授の研究室と松本市が住民自治について研究を進めるフィールドの一つに、安曇地区を選んだ。若者が先頭になって地域活性に取り組んでいる姿を、同研究室の李正連准教授も「地域の希望につながる」と評する。

帰郷できる環境整備する活動も

ブリッジは12年11月、奥田さんと宮下さんが進学や就職のため移住した東京から帰郷し、立ち上げた。「地域の人に支えられて育った。外に出たからこそ地元を見つめ直し、ほかのどこにもない魅力があると気づいた」と2人は話す。
同様に考える小中学校の同窓生は多い。地元で活動するのは12人だが、首都圏や松本市街地などで暮らしブリッジの活動に賛同する「外部メンバー」が70人いる。帰省時に活動に加わったり、情報交換したりしている。
彼らの約8割は実家が民宿などを経営している。宿泊客の減少に歯止めがかからない中で、きょうだいが家業を継いだり、「地元に戻ってきても稼げないぞ」といった周囲の声を聞いたりして地元に帰れないでいる。
そうしたメンバーの気持ちをくみ「彼らが帰れる環境をつくろう」と、ブリッジは宿泊業以外での働き口やビジネスの創出も目指す。
「1人の100歩より100人の1歩」。宮下さんは、自身の座右の銘を、ブリッジの活動を通して地域の中で形にしたいと考えている。

(嶋田夕子)