“今”を疾走 松本出身バンド

突然のメンバー脱退 「ロック」に向き合う

全国発売のCDデビュー記念ライブの前日、メンバー1人が脱退した。
松本市在住・出身者でつくるロックバンド「CASANOVA FISH(カサノバ・フィッシュ)」。残ったのはギター・ボーカルの西牧嵩大(しゅうだい)さん(20、同市県)、ドラムの勝田史也さん(22、同元町)、ベースの矢満田奎那(けいな)さん(20、東京都)の3人だ。
アルバムのタイトルは「FLASHBACK IN MY DREAM(フラッシュバック・イン・マイ・ドリーム)」。記念ライブの直前に、リードギターが出て行ってしまった。アルバム1曲目の歌い出しは皮肉にも「さあ、ドアを開けて外に出よう」だった。
まさに「ロック」を地でいく破天荒なデビューライブの行方は…。

気持ち偽らずにライブ

ロックバンド「カサノバ・フィッシュ」の西牧嵩大さん、勝田史也さん、矢満田奎那さんと、リードギターの女性の4人は、全国発売のCDデビューをPRするため、MGプレスなどを訪れた。伊那市での記念ライブを翌日に控えた昨年12月13日。4人は作品の出来栄えや意気込み、抱負などを熱く語った。
その日の夜、4人が集まった。リードギターの女性から漂う「バンドを抜けたい」という空気を、ほかの3人は感じていた。
真意を確かめるための話し合いのはずだったが、お互い、核心を突けない。重い空気の中、しびれを切らして問いただしたのは矢満田さんだった。「辞めるの?」。矢満田さんの問いに、女性は「うん」とうなずいた。理由は、これからのバンド活動に「自信がなくなったから」だった。
このとき、3人の心は決まった。「明日のライブは3人でやる」。だが、リードギターの抜けた穴は大きい。その日の午後11時から塩尻市内のスタジオで日をまたいで数時間練習。ライブ当日も午前9時から同じスタジオで練習。リードギターのパートは、部分的にアレンジを変更し、西牧さんが担当することになった。
「せめて記念ライブくらいは4人一緒にやるという『大人』な対応は、やろうと思えばできた。でもあいまいな気持ちでステージに立ちたくなかった。このバンドにとってライブは命だから」。西牧さんはそう振り返る。
約80人の観客が集まった記念ライブ。6バンドが出演し、トリは主役のカサノバ・フィッシュだ。中にはSNSなどで既にメンバーの脱退を知っているファンも。いつも以上に熱く盛り上がった。
西牧さんと勝田さんは「(ライブの)ひりひりする感じはたまらなかった。3人でやって良かった」と満足感に浸った。

カサノバは、2016年に西牧さんが高校の後輩と結成したのが前身。17年に松本市内のライブハウスで西牧さんが勝田さん、矢満田さんと知り合い、3人で本格的に活動を始め、翌年、後に脱退する女性が加わった。
今回のCDは、これまで自主制作を重ねてきたカサノバ初の全国流通盤。都内でライブハウスなどを運営するロフトグループの「シェルターユナイテッド」というレーベルから発売した。7曲入りで、作詞、作曲は全て西牧さんが手掛けた。
浜田省吾さんや佐野元春さんなど昭和のJポップに影響を受けたという西牧さん。「自分たちと同年代だけでなく、40歳以上の人にも受け入れてもらえるのでは」と期待する。
作品全体を通して信州人特有の海への憧れがにじむ。1曲目の「深夜徘徊(はいかい)少年少女」から3曲目の「犬になりたい」までは疾走感のある曲で引き込み、4、5曲目で一息つく。6曲目の「少年と海」はまさにJポップ調の恋愛ソング。「めまぐるしい10代最後の夏は君のことが好きだった」と歌うこの歌からは、波音も聞こえてきそう。
勝田さんは「全曲、シンプルを意識して演奏した」。矢満田さんは「聞いた人が本を読んでいるような気分になってくれたら」と狙いを話す。
3人ともアルバイトで収入を得ながらの音楽活動。今年は県内外で月6、7回のライブをしながらアルバムをPRしていく。西牧さんは「3人になってもカサノバはカサノバ。良くも悪くも今しか見えていない。すなわち音楽に全力です」。
CDは税別1800円。ライオン堂(松本市高宮東1)や平安堂各店で購入できる。

(浜秋彦、撮影・稲垣ルリコ)


投稿者: mgpress