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楽都に響け!お寺発オペラ 全久院・大黒の倉科京子さん

松本に市民オペラを広めたい

曹洞宗のお寺からオペラの歌声が響いてくる。合唱を指導するのは「大黒(だいこく=僧侶の妻)」だ。
松本市深志3の全久院。市民有志でつくる「オペラを楽しむ会」が5月、まつもと市民芸術館(深志3)で開く第10回記念公演に向け、練習に励む。主宰するのは倉科京子さん(64)。「とにかく歌が好き。皆で歌えばもっと楽しい」との思いから10余年前に「楽しむ会」を立ち上げた。
米国の大学でピアノと声楽を学んだ。35年前、僧侶と結婚。「音楽は続けられないかな」と思ったものの、夫で住職の利行さん(67)に背中を押され、再び音楽を楽しむように。
オーディションを受けてオペラに参加し、以来、その魅力のとりこになった。大黒として寺の事務を取り仕切りながら、「楽都・松本」の一端を支える。

音楽に触れる機会地元の園や病院で

松本短大幼稚園(松本市寿台)の遊戯室で倉科京子さんが園児に向かって歌いかける。「となりのトトロ」「ミッキーマウスマーチ」…。好きなメロディーを聴きながら体を動かす園児も。
クライマックスはオペラ「椿姫」から「乾杯の歌」。情感豊かな歌声が響き、会場から大きな拍手が湧いた。
「オペラを楽しむ会」第10回記念公演の関連イベントの一つ。「地域で気軽に音楽に触れられる機会を」と、3月まで計3回、園児や入院患者、被災地支援のためのコンサートを開く計画だ。
幼稚園でのコンサートの翌日、倉科さんは檀家(だんか)の新年会の準備で料理作りやもてなし、片付けに大忙し。総代会、観音講、表千家のお茶会といった定期的な行事にも携わる。

諦めた音楽の道夫の一言で再開

愛媛県松山市出身。広島大学教育学部に在籍中、国の派遣留学生として米国ミシガン大学音楽科へ。現地の英語学校で、夫の利行さんと出会った。東京で教員として働き8年後に結婚、松本に来た。
大黒としてさまざまな仕事があり、当初は音楽を諦めていた京子さん。「ピアノを弾いたり、歌ったりしてみたら」。結婚して2年後、様子を察したのか、利行さんにそう声を掛けられ、音楽を再開。利行さんの住職仲間らのバンドに誘われ、刑務所や病院などへ慰問演奏もした。
2004年に岡谷市で行われた創作オペラ「御柱(おんばしら)」にオーディションを受けてソリストで出演した。初めて立ったオペラの舞台。「大勢の人が関わって一つのことを盛り上げていく総合芸術の魅力にはまった」と京子さん。
松本でも市民オペラを広めたいと、声楽家や友人に声をかけ「オペラを楽しむ会」を発足。07年には第1回公演「フィガロの結婚」をまつもと市民芸術館で上演した。音楽教諭や音楽教室講師らによるソリストをはじめ、合唱や大道具、ピアノ伴奏などを加えた出演者約50人は、すべて県内からの参加。その後も1、2年ごとに上演を重ね、スタッフを含め総勢約110人が携わる舞台となった。
中学時代に合唱部だった菅沢真理さん(60、同市庄内)はママ友の京子さんに声を掛けられ、初回から参加。「誰でもウエルカムな雰囲気がいい。皆がここで居場所をつくっている感じ」と話す。
京子さんは営業、宣伝、練習計画まですべてこなす。最近、体力的にきつくなってきたが「それでも初めて公演を見た人に『感動した』と言われるとうれしい。仲間と共にオペラファンを広げていくのが生きがい」という。

市民オペラ公演の支援や活動機会の提供といった活動をしている「リリカ・イタリアーナオペラ研究所」を主宰する澤木和彦さん(東京)を総監督と指揮者に招く今年の公演。1月25日には10~80代の約20人が全久院に集まり、熱のこもった稽古をした。「オペラは声を聴かせる芸術。作曲家の意図もくみ取ってしっかり歌って」。指導する澤木さんの声を受け、メンバーの熱気がさらに高まった。

【オペラを楽しむ会第10回記念公演】5月3日午後2時、まつもと市民芸術館主ホール。歌劇「椿姫」全3幕。全席自由。大人5000円、大学生2000円、小中高校生1000円。同実行委員会主催。