2020.2.10 ウェブサイトをリニューアルしました

白鳥伝説 あづみとゆうき 絆と愛のドラマ

安曇野市豊科の犀川白鳥湖。大型バスを改造した観察館の外に取り付けられた、2羽の白鳥「あづみ」「ゆうき」を描いた大きな看板が、県内外から訪れる親子連れや団体の目を引き、「2羽について知りたい。教えて」という問い合わせが増えている。白鳥湖にコハクチョウが飛来するようになり、今冬で36シーズン目。中でも最も多くの人々に生きる力を与え、伝説となった“愛のドラマ”を振り返る。
今年1月25日午後、愛知県の恵の実保育園(豊川市)と、蓮華の家共同保育園(岡崎市)の園児・保護者計34人が、小谷村での「雪遊びの合宿」の帰路に白鳥湖に立ち寄った。初めて白鳥を見る園児22人は、水かきを広げて湖面に舞い降りる姿や、羽づくろいのしぐさに興味津々。小林蒼太ちゃん(6)は「飛ぶ姿がものすごく格好よく、きれいだった」と目を輝かせた。
「あづみとゆうき」の看板の前では、日本白鳥の会副会長でアルプス白鳥の会事務局の会田仁(まさし)さん(70)が「白鳥は家族をとても大切にします。けがをして飛べなくなり、遠い生まれ故郷に帰れなくなったあづみに、ゆうきがずっと寄り添い守り続けました」と園児に語り掛けた。
「あづみとゆうきに会いたい」と言う牧原葉月ちゃん(6)に、会田さんは「死んじゃったのでもう会えないです」。「死んじゃったの?」。葉月ちゃんがこぼした大粒の涙が、当時2羽の姿を追い続けた記者の心を揺さぶった。

寄り添う2羽 濁流に襲われ

2011年5月、梅雨に入っても白鳥湖にはコハクチョウの成鳥2羽が残っていた。右の翼と左足にけがを負い、飛べない雌の愛称は「あづみ」。元気な雄「ゆうき」が北帰行せずに寄り添っていた。
同30日、降り続く豪雨で白鳥湖は大洪水となり、渦巻く濁流が2羽を襲った。
午前4時40分 下流の光橋から眺める白鳥湖は濁流にのまれ、一つだけ残った緑の中洲が浮島のように映る。中洲まで約500メートル。雨の中、1200ミリの超望遠レンズで探し、中洲の下流先端付近の木陰で、流れに一晩中耐えた2羽の姿を確認。
4時55分 白鳥湖に到着すると堤防上で手を合わせて祈る人影が。地元の保護団体「アルプス白鳥の会」会長の原とみ子さん。「2羽とも無事でよかった。昨夜は心配で眠れなかった」と涙ぐみ、同会の会田さんも「翼の負傷は鳥にとって致命的。流されないでよかった」。
6時すぎ 30人を越える白鳥ファンや写真愛好家らが心配し、次々と堤防に集まって来る。
8時半 2羽の行動範囲は中洲の木々の、下流側の先端付近だけ。ゆうきが下流側に回り込み、あづみが流されないようしっかり寄り添い守る姿が、フアンの涙を誘う。
10時20分 突然、予期せぬ事態が。北帰行を促すかのように、ゆうきが右岸側へ70メートルほど飛んで見せた。あづみが後を追うが、翼が開かない。本流の中に落ち、懸命に脱出しようともがくが、あっという間にえん堤まで運ばれ、濁流の中に消えた。
ゆうきは、あづみを探しにえん堤前まで近づいたが、驚いて上流へ約30メートル飛んだ。その後、覚悟を決めたように、あづみを追ってゆうきもえん堤から激流の中に消えた。
固唾(かたず)をのんで見守るファンに、緊張が走る。2羽の姿が見えない。会田さんが下流へ捜しに走る。11分後、「生きてる、2羽とも生きてる」と会田さんから携帯に電話があり、安堵(あんど)感に包まれた。
10時52分 下流左岸の濁流のよどみで寄り添う2羽を見つけて撮影。
午後6時半周囲を警戒しながら水辺の草の上で休息するあづみ。その横で、ゆうきが見守り続ける。

野生の白鳥の寿命は10~12年。一度ペアを組むと、生涯相手を変えることはない。濁流が渦巻く白鳥湖を舞台に、あづみとゆうきが教えてくれた、絆の強さと命の大切さ。2羽の絵が、感動の「白鳥伝説」を後世へ語り伝えていく。
(丸山祥司)