2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

ベンチプレスの世界大会目指す 松本の柔道整復師・深澤さん

やればやっただけ結果が出る

筋骨隆々の2人の男性。その視線の先で、米俵1俵より10キロも重いバーベルを、ベンチ台に仰向けになって挙げる女性。松本市原の柔道整復師、深澤歩さん(31)は、ベンチプレスで世界を目指す。
ダイエットを機に始めたこの競技にどっぷりはまった。「ベンチプレスは自分と向き合っている時間が長く、ぐっと集中できるところが好き」
同市島内のトレーニングジムに埼玉県深谷市から通っていたが、昨年10月、練習に打ち込むため移住。現在は5月15~23日にチェコで開かれる世界選手権出場を視野に、日々、鉄の塊と向き合う。
深澤さんの脇に立つ胸板の厚い2人の男性は、ベンチプレスの世界王者。心強い味方に見守られ、きょうも天に向かってバーベルを挙げ続ける。

世界知る2人が練習サポート

午後7時。深澤歩さんは、練習拠点の松本市島内のトレーニングジ「B.A.D.(ボディアートデザイン)」でトレーニングを始めた。室内にはベンチ台が8台。トレーニングに励む周囲の男性たちの中で、ひときわ目を引く2人がいた。分厚い胸板と丸太ん棒のような腕で200キロ前後のバーベルを挙げている。
1人は、ベンチプレスの世界選手権83キロ級で2連覇中の鈴木佑輔さん(35、安曇野市三郷明盛)。このジムのオーナーで、深澤さんの「師匠」でもある。もう1人は、昨年のジュニア(23歳以下)の世界選手権105キロ級を世界新記録の222キロで制した瀧本高博さん(23、松本市笹賀)。鈴木さんが「一番弟子で一番強い弟子」と評する有望株だ。
深澤さんは、2人からアドバイスを受けたり、けがをしないように補助してもらったりしながら、トレーニングを重ねている。上体を反らせてアーチ状にし、スタートポジションを固定。最初はフォームを確認しながら、両端に鉄のプレートを付けずに20キロのバーだけから始め、徐々に重量を上げていく。
「赤板(あかばん)、いくか」。鈴木さんの問い掛けに、笑顔を見せながらうなずく深澤さん。赤板とは、最も重い25キロの赤色をしたプレートだ。それをバーに装着し、自己ベストの75キロに迫る計70キロのバーベルを挙げて見せた。
「毎回こんな感じ。仕事が終わってからトレーニングを始めると、午前0時近くまでここにいます」。深澤さんはそう言ってほほ笑んだ。

ジム通い増え埼玉から転居

深澤さんがベンチプレスを始めたのは2017年6月。ダイエット目的で取り組んだ筋トレの一環だった。中学生のときに柔道をしていて初段を持ち、力にはある程度、自信はあった。だが、最初は20キロのバーを2、3回しか挙げられず「こんなに力がなくなっていたのか」とがく然。しかし、やればやっただけ、数字として結果が出るベンチプレスにはまり、3カ月後には大会にも出場した。
さらにベンチプレスに入れ込むきっかけとなったのは、2018年にドバイで開かれたアジア大会。大会期間中に鈴木さんと一緒に練習する機会があり、以前から周囲に「しっかりと教えてもらった方がいい」と、アドバイスを受けていた深澤さんは、鈴木さんに指導してもらうことに。深谷市の自宅から鈴木さんのジムに通うようになった。
最初は月1回だったのが、2回になり…。徐々に回数が増えていく。そのうちほぼ毎日、顔を出すようになったため、鈴木さんが「どうしたの」と尋ねると「松本に引っ越しました」。さらっとそう答えた。「遠い国で開かれる国際大会に積極的に参加するのもそうだが、彼女の行動力はすごい」。鈴木さんも舌を巻く。

1月末に津市で開いた、世界選手権代表選考も兼ねる第20回ジャパンクラシック選手権大会。鈴木さんと瀧本さんはともに優勝し、代表権を獲得した。深澤さんは女子63キロ級で2位。代表になる資格は得たものの、枠の関係で世界選手権への出場は確定していない。
この大会で深澤さんと同クラスで優勝した選手は100キロ以上を挙げる。「実力的に世界にはまだまだ及ばないが、まずは80キロをしっかりと挙げたい」。出場すれば初となる最高峰の世界大会という夢に向かって瞳を輝かせた。
(浜秋彦)