松本歯科大学公衆衛生学講座・山賀孝之教授に聞く―口臭の原因と予防

発生源は舌の表面
食事など生活習慣も影響

新たな出会いが増える春はもうすぐ。対人コミュニケーションで気になるのは「口の臭い」。口臭予防は大人のエチケットでもある。でも口臭は自分では気付きにくい。「私は大丈夫?」。口臭の原因と予防対策を松本歯科大学(塩尻市広丘郷原)公衆衛生学講座の山賀孝之教授(48)に聞いた。

嫌気性菌を増やさない

世の中には良い匂いと、不快な臭いがあります。人によって感じ方は違うでしょうが、人に迷惑を掛ける「社会許容限度を超えた不快な臭い」を口臭と呼んでいます。
口臭には生理的口臭と病的口臭があります。生理的口臭は起床時や長時間話した後など原因疾患のないもの。病的口臭はその約8割が口腔(こうくう)内の疾患に由来し、ほとんどが歯周病です。
生理的口臭も病的口臭も原因物質の主体はVSC(揮発性硫黄化合物)です。卵が腐ったような臭いの硫化水素、それよりもさらに毒性が強く、生ごみのような臭いのメチルメルカプタン、磯のような生ぐささを放つジメチルサルファイドの、主に3種類から成ります。そのVSCにアミン類やアンモニアなどの微量物質が混ざり、特有の臭いになります。
口の中の臭いの発生源は舌の表面です。その量に個人差はありますが、鏡で舌の奥を見ると表面に白っぽいコケのようなものが付いています。これは「舌苔(ぜったい)」といいます。細菌や口の中のはがれ落ちた細胞、食べかすなどが集まったもので、その中の嫌気性菌(けんきせいきん)がタンパク質を分解して臭い原因のVSCを産生します。
嫌気性菌は誰にでもあり、完全になくすことはできません。増え過ぎないようにコントロールすることが重要です。
有効なのが舌清掃です。専用の舌ブラシが市販されていますし、目が粗いタオルを指に巻いても代用できます。磨くところは鏡を見て舌を出したときの一番奥の部分。ブラシを軽く当てて手前に引きます。
粘膜を保護するため、1日1回。汚れが付かなくなる程度が目安。力を入れ過ぎず、出血するまでやらないで。口臭が最も強い起床時に行うのがお勧め。舌苔を取ると食事がおいしいといわれています。
舌清掃だけでなく、生活習慣の改善で口臭をコントロールしましょう。口臭には日内変動があり、起床時が最も強く空腹時にも強く出ます。口臭は食事を取ることで抑えられることが分かっています。食事と食事の間隔が長いと口臭が強まるので、3食を規則正しく取りましょう。さらによくかむことも大事です。
補助的手段ですが、塩化亜鉛入りの洗口剤も効果があります。夜勤がある、昼休みが取りにくい、話をすることが多い|といった人たちに向いています。

病的口臭は疾患治療を

口腔由来の病的口臭はほとんどが歯周病です。VSCのうちメチルカプタンの割合が多いので、強烈な悪臭を生みます。治療が最優先ですが、主要な発生源はあくまでも舌苔。普段のセルフケアを続けたいですね。
病的な原因の口臭はその疾患の治療を。一方で起床時や空腹時などの生理的口臭はありふれた生理現象です。対人マナーとしての口臭コントロールは必要ですが、家族やパートナー同士なら少しは寛容になって。「気にしない」ではなく「気にし過ぎない」。「口臭をなくす」ではなく「付き合っていく」くらいの気持ちがいいと思います。