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大桑村野尻宿クラシックバイクたたずむ「珈琲刀」 レトロで粋なカフェ開店

「古き良き時代」の雰囲気を

旧中山道の宿場町・大桑村の野尻宿。曲がりくねった道筋を歩いて行くと、古民家が見えてきた。カフェのようだ。その店先にたたずむクラシックバイク。つややかに光る黒いボディーに引かれて近寄ってみると、前輪のフェンダーに「メグロ」とある。
1964(昭和39)年の東京五輪で、聖火リレーを先導した白バイがメグロ。70代、80代になる往年の「ライダー」たちにとって、憧れであり、ノスタルジーをくすぐる名車が店の看板代わりとは、なんておしゃれ。
粋でレトロ感たっぷりのカフェは、今月オープンした。くしくも今年は2回目の東京五輪の年。店先のメグロは話題性もぴったり。
店の名前は「珈琲刀(コーヒーカタナ)」。バイク好きなら、この店名にピンと来るはず。店のあるじは恐らくシニアのおじさん、と思いきや…。

横浜から移住古民家を改装

カフェ「珈琲刀」は江戸時代には鍛冶屋だった建物。ここ50年ほどは空き家だった。
オーナーは、クラシックバイクや車が好きな※舘(えんだて)絵美さん(40)。横浜市から移住し、カフェに改装した。和室などの間取りや、壁、天井はほぼそのまま残し、カフェ用のカウンターなどは木曽ヒノキなどの地元産を使っている。
土間を挟んだ反対側は車庫。店名にもなっているスズキの「カタナ」、カワサキの「ニンジャ」のほか、映画「ローマの休日」で女優オードリー・ヘップバーンが乗り有名になったイタリアのスクーター「ベスパ」が置いてある。いずれも※舘さんの愛車だ。
バイクや車で全国各地を旅していた※舘さん。「おばあちゃんの家のような場所で、いつか自分が人をもてなしたい」と、各地の古い空き家を探し野尻宿に行き着いたという。
カフェには幅広い世代が訪れる。幼児を連れて来店した近所の主婦(20代)は「おしゃれなカフェができそうで、開店前から楽しみだった」、地元の高校生グループは「こういう場所が近くになかったのでうれしい。置いてあるバイクもかっこいいです」。

木曽漆器や食材“いいもの”選ぶ

※舘さんは静岡県生まれ。転勤族の夫に付き添いながら、コーヒーメーカーの研究開発やIT関連の企業で働き、いつかは飲食や宿泊ができる店を開きたいと夢を抱いていた。
夫婦でツーリングするのが趣味で、全国を回った。中でも「水や空気が澄んでいて食べ物もおいしく、住民も温かく接してくれる」信州が気に入った。インターネットの「空き家バンク」で古民家を見つけ、土地建物の購入を決心。約1年かけて開店準備をした。
同村は定住促進を図るため、2011年度から「空き家情報バンク」を設けており、これまで46軒の登録と32軒の成約があった。だが、野尻宿で古民家を活用したカフェは初めてという。
周辺は宿場の雰囲気が残るものの、空き家も目立ち、開店を喜ぶ住民は多い。3軒隣の山本秀樹さん(66)は「最初は大丈夫だろうかと心配したが、本当に来てくれてありがたい。1軒がこうなるだけで空気が変わる」と歓迎する。

店内は昔のストーブや着物などが飾られ、食器やお盆などにもレトロ感が漂う。鍛冶屋の名残なのか、「火要鎮(ひのようじん)」と書かれた看板も。すべて改修の際に出てきた。子どものころに祖父母と同居し、蓄音機や古い本などを見るのが楽しかったという※舘さん。「もともと古いものが好き。“ほっこりする”から」
縁もゆかりもなかった大桑村で、夫と離れての1人暮らし。「店の周辺を歩いてみると昔の石垣など古い面影が残っていて楽しいんです」という。今後は地域の観光団体などと連携し野尻宿を体験するツアーなどにも協力したいという。落ち着いたら、夜のバーや、ライダーハウスのような民泊も始めたいと考えている。
店で出すコーヒーの器は木曽漆器を使い、蜂蜜や牛乳なども郡内産を選ぶ。「木曽のいいものを集めて紹介できるカフェにしたい」と※舘さん。
母の中島理都子さんが当面の助っ人で、週末には夫が手伝いに来る。「バイクで訪れた人が土間に腰掛けて休んだり、地元の人がくつろげたり。懐かしくて温かい場所にしていきたい」。木曽路に、古き良き時代の雰囲気を楽しめる名所がまた一つ生まれた。
(井出順子)

【メモ】珈琲刀 大桑村野尻1724。午前10時~午後5時。月曜定休(祝日の場合は翌日)。問い合わせは店のホームページから

※狩の守が犬