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みそ造り最盛期 山形村の農業エポック館

人と人をつなぐ絆も「隠し味」

みその香ばしい香りが立ちこめる。山形村農業エポック館の農産物加工室。「えい!」「それ!」。みそ玉を威勢よくたるに打ち付ける声と音が響く。丁寧に押さえ付けて空気を抜き、また「えい!」「それ!」と打ち付けては押さえ付け…。
みそのたる詰めをしていたのは村の「仲良しグループ」5人と、その家族ら計8人。「空気の抜き方がうまい。そこが“ミソ”なんだよね」「元気にやってくれて助かるわ。来年も頼むよ」。たるに押さえ付ける役の2人に、冗談交じりの掛け声が飛んだ。
脇では、大豆や麹(こうじ)を機械に入れて混ぜ合わせたり、空いた容器を洗ったり。それぞれ手慣れた様子で作業を進める。村のみそ造りは最盛期。施設もフル稼働が続く。

20年前に発足家族の協力も

「家で造っていたみその味が、ずっと忘れられなかった」
5人の「仲良しグループ」は、百瀬弘江さん(77、下竹田)が20年ほど前に村農業エポック館でみそ造りができると知り、百瀬富子さん(78、同)らに声を掛けて発足した。以来毎年、顔を合わせて造っている。
同グループは4日間かけて作業。初日に家で収穫した米と大豆を持ち込んで洗い、2日目に米を蒸して麹菌を混ぜて仕込み、大豆を煮てつぶす。3日目は麹をほぐしてかき混ぜる作業を2回。最終日は大豆、麹、塩を混ぜ、たるに詰める。富子さんと籏町三衣子さん(82、下大池)のベテランコンビが、慣れた手つきで空気を抜きながら、次々に詰めていった。
「みんな高齢になって力仕事が大変。世代交代しなきゃかね」。そんな声も漏れたが、家族の協力も得て作業は進んだ。「昼食にみんなで食べて」と、そばを打って持って来る夫、人手が必要な日を事前に聞いて仕事の休みを調整する娘、学校が休みの日に手伝いに来る孫…。大豆やみそを運ぶ力作業に、軽トラックで駆けつける息子や孫の姿に「あれ、もうこんなに大きくなっただかい」と会話も弾む。
合間にお茶を飲み、持ち寄った漬物や野菜をつまみながら、料理などの情報交換をするのも楽しみだ。指導員の窪田典子さん(55、小坂)は「立場は指導員だけど、こちらが教わることの方が多い。四季折々のものに手を掛け、大切に食べている人たちの知恵はすごい」と話し、並んだ漬物や料理の作り方を教わっていた。

無添加の安心他にはない味

百瀬さんらが作業を進める間に別のグループが来館。保育園の保護者会仲間から生まれた瀬川温子さん(60、上大池)らだ。翌日の作業に向け、大豆を洗って水につけていた。1日でみそを仕込んでいるという。
豆を洗う瀬川さんらが「ねえ、たくさん浮いてきちゃったんだけど、使える?どう思う?」と百瀬さんらに尋ねると、「大丈夫だわ、そんなもん」と、ベテランらしく即答。「そっか、大丈夫だね。ありがとう」。グループ間のやりとりも、顔なじみならではの光景だ。
時間がかかる麹作りは委託するなど、できる範囲で作業を調整。「以前は4日かけていたが、介護や仕事などで時間が取れなくなった」と瀬川さん。それでも「添加物も入っておらず、おいしい。造るたびに味が違うのもいい。ここで造ったらもう、他のみそは食べられない」。村農業エポック館がつなぐ人と人の絆も、隠し味になっている。
(上條香代)