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佐藤文子さん 25年ぶりの句集出版

俳人で甲信地区現代俳句協会長の佐藤文子さん(74、松本市横田)が、25年ぶりとなる第三句集「火炎樹(かえんじゅ)」を出版した。半世紀以上に及ぶ俳句人生の集大成といい、これまで作った2000句以上から自選し、自身の心の軌跡を形にした。
「新年─初芝居の抄」に始まり、「春─雪解川の抄」から「冬─海雪の抄」まで、自作を季節ごとに並べた。情景が浮かぶ四季の移ろいを詠んだ句のほか、今回、心の風景にも挑戦。「事実とも非事実とも知れぬものを描きたかった」と佐藤さん。
いつか俳句で小説が書けないかと思案してきたといい、「どのページ、句から読んでもかまわないが、最初から最後まで読むと、実は一つの物語が隠れている」と言う。
30年ほど前、市内の繁華街・裏町に住んでいた。当時にぎやかだった夜の街で働く女性の姿や、男女の恋模様なども目にしてきた。「夏─火炎樹の抄」では「梅雨の夜や濡れて光りしマンホール」「香水を一滴あの人殺すため」など、若いころは詠めなかったという、なまめかしさや情感あふれる句も随所に並ぶ。
佐藤さんは三重県で生まれ、高校まで北九州市で過ごした。京都女子大時代に俳人の穴井太さんと出会い、俳句の道へ。結婚して松本市に移住してからも地域で句会を開き、魅力を広めてきた。主宰する句誌「信濃俳句通信」は今春、創刊35周年を迎える。
「いつもそばに俳句があった。私にとって水や空気と同じようなもの。これからもずっと詠み続けたい」と佐藤さん。
表紙絵と装丁は、佐藤さんの「憧れの存在」というイラストレーター宇野亞喜良(85)さんに依頼。カバーを外すと別の絵柄が現れる、しゃれた作りだ。
東京四季出版刊。四六判、187ページ。3300円。
(高山佳晃)