2020.2.10 ウェブサイトをリニューアルしました

王滝を元気にする 海外ボランティア

地域に刺激可能性も広げる

御嶽山麓の標高2240メートル、乗鞍岳や中央アルプスを望む王滝村のスキー場「おんたけ2240」に、英語の場内アナウンスが流れている。協力したのは海外からのボランティアツアー参加者。文章を考え、録音もした。
ツアーは昨年5月から始まり、これまでに約80日間、計23人が参加。今年は村内に滞在拠点を整備し、より多くの参加者を受け入れる予定で、住民が古民家の改修を計画し、クラウドファンディングで資金調達を始めた。
きっかけは一昨年7月の大雨による村道の崩落だった。滝越地区住民と外国人観光客、ダムで働く電力会社従業員ら計25人が孤立。その中に、タイに本社がある旅行会社「グリーンライオン」のスタッフで、ドイツ人のバーナード・ゲスラーさんがいた。

収穫や翻訳…外国人と交流

バーナード・ゲスラーさんは当時、ツアー先を探すため来日し、たまたま王滝村を訪れていた。避難所で過ごした間、住民から差し入れをもらったり、観光地を案内してもらったり。「いつか恩返しをしたい」。その思いを胸に、村を後にした。
その年の10月、ゲスラーさんから申し込みを受け、滝越地区で村の指定管理物件のキャンプ場などを運営する合同会社「Rext(レクスト)滝越」が受け入れを契約。村民の温かさがツアー誘致につながった。
「観光とボランティアをつなげたツアーって面白そう」。担当になった杉野明日香さん(37、岐阜県出身)は、住民がボランティアを必要としていることを探し、参加者を案内した。草取り、野菜の収穫、子どもたちの遊び相手…。徐々に交流が広がっていった。
「外国人と授業以外で接したのは初めて。すごく新鮮だし刺激的だった」。そう語るのは王滝中学校3年生の下出桜さん(15)。1月にボランティアツアーで村を訪れたアメリカ人やイスラエル人らと交流。自己紹介をし合ったり、外国の言葉を教えてもらったりした。
創業150年の「普寛堂くるみ沢旅館」では昨年5月、旅館側がこれまでなかなか外国人に伝えられなかった「霊神碑」をイギリス人とカナダ人が英訳したり、スタッフと外国人宿泊客の会話を通訳したり。
若おかみの胡桃澤尚乃さん(52)は「翻訳アプリもある時代だけれど、実際に外国人がボランティアで通訳してくれたということが貴重」。交流も楽しかったといい、「こんなことは初めて。地域の可能性を感じた。もっと広がってほしい」と笑顔を見せる。

新たな拠点に古民家を改装

ツアー参加者は欧米やアジアなど多国籍で、20代が最も多い。感想を書き込むノートには「自給自足の生活をする村の人々を尊敬します」「子どもや村民と友達になれてラッキーだった」「素晴らしいホームステイと、もてなしを経験でき感謝」などとつづられている。今年もすでに、メキシコ人やイスラエル人の予約が入っている。
一方で、運営には課題も。昨年は杉野さんの住居を農家民宿にして受け入れたが、手狭な上、村中心部とも離れている。そのため、ツアー参加者と一般住民との自然な交流が広がりにくい面があった。
また、住民や観光客に親しまれた「王滝食堂」が昨年閉店。顔を合わせる場所の一つがなくなった。
そこで、レクスト滝越は「人が集える新たな拠点を」と、村公民館などに歩いて行ける範囲にある古民家を購入。改装して農家民宿とバーを開く準備を進めている。開業に必要な費用700万円のうち、150万円をクラウドファンディングで3月27日まで出資を募っている。
王滝村は人口約730人。本年度の小学校新入生が初めてゼロになり、2022年4月には王滝中学校が木曽町中学校に編入するなど、深刻な少子化が続く。
「ツアー参加者が子どもたちと交流できる拠点を設け、地域の魅力づくりに一役買えたらいい」。杉野さんはツアーの取り組みを通じて、将来への希望を見いだしたい考え。レクスト滝越の倉橋孝四郎代表(35)は「ツアーが来るたびに村の課題が少しずつ解決していく。皆さんの力を借りて村を元気にしていきたい」と話す。
クラウドファンディングのウェブサイトは「レディフォー王滝」で検索。
(井出順子)