冬の草原のステージで舞う霧氷のプリマドンナ(美ケ原高原焼山)

雲の切れ間から差し込むスポット光を浴びて霧氷のプリマドンナが輝き舞う
=ニコンD5、ニコンED AF VRニッコール80~400ミリ、PL、ハーフND、午後1時55分

去りゆく冬惜しむ一瞬の輝き

里に花便りも届く23日、美ケ原高原では去りゆく冬を惜しむかのように「霧氷劇場」が繰り広げられていた。美ケ原牧場の焼山(1907メートル)では、山頂の稜線(りょうせん)にあって絶好の被写体として知られる通称「お宝の木」(ダケカンバ)が鮮やかに霧氷をまとい、出番の時を待っていた。
撮影準備を始めた正午の気温は氷点下5度。主役=プリマドンナをファインダー内の指定席に配置し、表現を思い浮かべながら、色調や明暗などデジタルカメラの機能を操作し構えた。春を意識させる枯れ草のステージが暖かく、白銀の冬の表情とは対照的に映る。牧場の斜面に点在する残雪模様がプリマと効果的に共演する形になるよう構図を決めた。
準備は完了したが、上空に雲が広がり、日差しが遮られてしまった。待つこと1時間50分。ようやく焼山を照らすように流れる帯状の光の通過が始まった。第1幕から4幕までは、光の流れがステージ中央付近を通過。風向きが変わった5幕目は、プリマが待つ稜線へ、光の帯が駆け上っていく。チャンス到来だ。緊張感が走ったその瞬間、橙(だいだい)色に輝く稜線のステージが鮮やかに浮かび上がり、スポット光を浴びたプリマの白い肢体が空中に舞った。感動の光彩の撮影は、5秒間だった。
脳裏に描き続けてきた光景。大自然は8シーズン目にして、ようやく撮らせてくれた。
(丸山祥司)