自作三輪バイクで風を切る

若い頃に楽しんだバイク。年を重ねても楽しみたいが、運動神経も体力も低下し、転んだらどうしよう|。そんな不安を抱える昭和世代の「おやじライダー」がたどり着いたのは、二輪のバイクを改造した三輪バイク。
松本市波田の久保田隆さん(70)。16歳からバイクに乗り、古い車体をレストアするなどして楽しんでいたバイク好き。風を切る爽快感を、シニアになっても味わっていたい。
以前、勤めていたガソリンスタンドに立ち寄った人が乗っていた市販の三輪バイクを見た時、「欲しい!」との衝動に駆られた。買おうと思ったが「高くてびっくりした」。
普段から、パソコンを修理したりソーラー発電機を作ったりと、機械いじりや工夫することが大好きな久保田さん。「それなら自分で作ってしまえ」

松本の久保田隆さん
「人と違うものを作りたい」

久保田隆さんの改造三輪バイクの原型はホンダの250cc。レストアするつもりで10年以上前に買った。当初はエンジンもかからない状態だった。
後輪と、その上の荷台などを全て取り去った上で、パイプを溶接して後部を組み立て、軽自動車の荷台やタイヤをうまく利用して取り付けた。試行錯誤しながらの挑戦。車体の構造は法令に照らして幅130センチ、長さ250センチ以内で作らなければならない。紙の上に設計図はなく、頭の中に描くだけで、計りながら仕上げた。
機械が壊れたら修理してもらうか、だめなら捨てる|。そんな二者択一しか頭に無かった記者にとって、直すだけでなく形や仕様まで変えて使えるようにしてしまう発想には、ただただ感心するしかない。

重量や部品探し 苦労や失敗重ね

これまでにバイクを40台ほど所有し、レストアの経験も豊富な久保田さんだが、三輪バイクを作った経験はなかった。完成までに多くの失敗も重ねた。三輪に改造した分、重量が増し、取り回しに困難な面も。「バックするのに後ろが重くて。降りて方向転換するのは大変。バックギアを取り付け、改善した」と久保田さん。
「プラモデルと一緒でタイヤやギアなど、部品探しが苦労」。溶接を伴う大掛かりな改造は初めてで、「最初は全くくっつかなかった」。ボディーに赤の塗装を施し、1年ほどかけて昨年完成。「やった!」。思わず声を上げた。
完成すれば乗ってみたいのは当然。昨年、陸運局に申請し、ナンバーの交付を受けた。普通免許があれば、立派に公道を走れる。
2台目の青い三輪バイクも作った。最初の赤に比べ、期間、費用とも半分ほどでできたという。赤は自動車と同じシャフト駆動、青は普通のバイクと同じチェーン駆動。今年は2台目のナンバーも取得する予定だ。
現在は、250ccのバイクに取り付けて三輪に改造できる後輪部分を制作中。完成すればオークションで販売する予定だ。「手持ちのバイクを利用し、駆動系をきちんとつなげば三輪バイクになる」という。

いずれは遠出を 夢見て挑戦続く

久保田さんのものづくりの根本にあるのは「人と違うものを作りたい」との思いだ。専門知識はないが、調べながら、こつこつと仕上げる。車のバッテリーを使って蓄電できるソーラー発電機、太陽光を利用した湯沸かし器、電動で動く一輪車─。さまざまなものを形にしてきた。
三輪バイクも、あまり見掛けないものだ。「人が乗っていないバイクだぞ、という優越感が味わえる。乗り心地も二輪車とは全然違う」と久保田さん。「燃費はあまりよくないけどね」と笑う。
今回覚えた溶接の技術を生かして、違うことにも挑戦したいと言う。「次にやりたいことがまだ見つからないから、当分は三輪バイクかな。作り方を知りたい人には教えたい」。今は近くを試運転中だが、いずれ遠出したいとの思いが募る。お遍路巡りをしながら四国一周をするのが夢だ。「季節が良くなったら出掛けたい。来年になるかな」。二つと同じものがないオリジナルの三輪バイクで旅する日を夢見ている。