カセットテープ人気定着

10~20代の音楽ファンに近年、アナログ志向が定着し、彼らにとってカセットテープやレコードで音楽を聴くことは、特別なことではなくなっている。松本市を拠点に活動する3人組バンド、TANGINGUGUN(タンギンググン)も4月、7曲入りの新作ミニアルバム「安い呪文」をカセットテープでリリースした。

色や印刷にもレトロな味わい

イギリスから取り寄せた独特な紫色のカセットに、タイトルやバンド名をシルクスクリーン印刷したこだわりの1本。「リソグラフ」で印刷された歌詞カードも、手作り感がありレトロな味わいだ。
「ドリーミーフォーク」「ウィアードポップ」「サイケデリックポップ」という言葉で表現されるタンギンググンの音楽。70~80年代のシティ・ポップを想起させるメロディーに、独特のざらつきやエコーなどを加え、そこに男女のツインボーカルの揺らめく声で追憶、憂い、哀感などを表現した詩的な言葉を織り込んでいく。
聴くと、現実からふっと離れ、白昼夢の中にいるような感覚に。胸がちくっとするような、それでいてどこか安心するような、なんともいえない心地よさに包まれる。
「浮遊感があるわれわれの音楽は、カセットテープと相性がいい」と話すのは、作詞作曲とボーカル担当の新美正城さん(31)。「テープの回転速度のむらで生じる『音揺れ』や、高音域と低音域がほどよくカットされて『丸くなった音』など、カセットでしか得られない音がある」という。

スマートフォンや携帯型デジタルプレーヤーで、デジタル音源をダウンロードやストリーミングで聴くのが当たり前の10~20代にとって、アナログなカセットは音楽の新しい聴き方であり、楽しみ方だ。
2010年代前半の米国で人気に火が付き、今やテイラー・スウィフトやジャスティン・ビーバーらトップアーティストが、デジタル配信と併せてカセットでも新譜を出す。日本でも5年ほど前から注目されるようになり、アイドルグループがカセットで新曲をリリースしている。
ジャケットやカセット本体のビジュアル、特有の柔らかくて迫力がある音、曲を飛ばさず、じっくりとアルバムの世界観に浸る体験…。
「コロナ禍で家にいる時間が増えた今、もう一度カセットで音楽を聴いてみてほしい。カセットだからこそ心に染みてくるものがあるかもしれない」と新美さん。
「安い呪文」は同市日の出町通りのマーキングレコーズ(中央3)や、バンドのオンラインショップなどで販売。1320円。デジタル配信もしている。詳細はタンギンググンの公式ツイッターで。

【TANGINGUGUN】
2016年結成。メンバーは松本市在住でギター・ボーカルの新美さん(写真中央)、ベース・ボーカルの平林沙織さん(32、同右)、ドラムスの関雅文さん(36、同左)。同市で開く野外音楽フェス「りんご音楽祭」に17年から毎年出演し、18年に韓国・ソウルでライブを行うなど、インディーズ界で注目されている(撮影=内藤朋佑)。