クラフトフェア延期の今 日々製作に励む若手作家を訪ね

虎の模様のような木目が美しいセンターテーブル。製作者は朝日村古見の木工作家、牧瀬福次郎さん(29)。30、31日に松本市のあがたの森公園で開催予定だった「第36回クラフトフェアまつもと」への初出展を目指し製作に励んできた。
クラフトフェアには地元松本市からも20代が出展する。守田詠美さん(29、城西)。富山県氷見市出身の鍛金作家だ。
新型コロナウイルスの影響でクラフトフェアは10月に延期され、2人の晴れ舞台も先送りに。実行委員会のNPO法人松本クラフト推進協会によると、今年、全国の約280組が出展を予定するが、20代の作家はほんのわずかという。
若い2人の工房を訪ね、不安を抱えながらも創作に向き合う姿を取材した。

今年が初の応募 前向きに準備 ― 牧瀬福次郎さん(朝日村)

朝日村古見の工房で牧瀬福次郎さんは新しいベンチを作るため材木を切っていた。「木は一つ一つが違う。それぞれの素材の持ち味をどうやって生かそうか考え、作っていくのが楽しい」と話す。
村内で「牧瀬家具製作所」を経営する父の昌弘さん(61)も木工作家だ。同じ工房で適度な距離を保ちながらそれぞれ創作をしている。小さい頃から父の作品は見てきたが、作家になるつもりはなかったという。
福次郎さんは石川県内の大学を卒業。現地の農業法人に就職したが激務で体調を崩し、朝日村に戻った。
「やっぱり木工が好きだったのかな」。そう思い、作家を目指し24歳で県上松技術専門校(上松町)へ。卒業後、松本市や朝日村の作家のもとで数年間修業し、父の製作所に拠点を置いた。
これまで作品発表の場は自身のインスタグラムや地元作家らによる作品展。今年、初めて「クラフトフェアまつもと」に応募した。延期は「逆に準備期間が長くなった。じっくりといい物をつくりたい」と前向きだ。
3月から工芸品を販売する「グレインノート」(松本市中央3)の運営にも加わり、週に2回は店に立っている。工房で創作に集中する日々に客と接する場が加わったことで、自分を客観視できるようになり、より意欲が高まっているという。
「木工作家として生き残れる人は一部。今も不安の方が大きい」と牧瀬さん。安い物がネットですぐに手に入る時代でもある。それでも「お金を出してでも購入し、大切に使ってもらえるような木工作品をつくっていきたい」。何となく父に近づいている自分も感じている。

学生時代から運営に関わり ― 守田詠美さん(松本市)

金属の板を金づちでたたいて造形していく金属工芸の「鍛金」。守田詠美さんのような女性の鍛金作家は少数派だ。「自分の身の丈に合っている」と、フォークやスプーンなどのカトラリー類に特化し、創作に取り組む。
「ちょっと耳をふさいでいてください。結構、音が響くので」。そう言って金属板をたたき始めた守田さん。つるっとしていた板の表面がでこぼこになっていく。用いる金属は「洋白」という合金。3種類の金属が入っており、色味の深さと美しさが気に入っているという。一方、たたくと割れやすく「機嫌を見ながら」作業する。
富山大学芸術文化学部で鍛金を学んだ。「クラフトフェアまつもと」は学生時代から好きで、訪れていた。4年生の時、「ボランティアで運営を手伝いたい」と実行委員会にメールで直談判。運営に関わるようになった。
大学卒業後は東京で会社員として働き、休みの日などにカトラリーを作り始めた。2年半前、作家を目指し退職。工芸作家が多く、街の雰囲気も気に入っていた松本に昨年12月に移り住み、工房を構えた。
クラフトフェアに作家として参加するようになって3年目。来場者と交流でき、ギャラリー関係者らとの出会いを通して作品展示など次の仕事につながる場でもある。「延期はがっくりしたけれど、自分を見つめ直す時にもなった」
毎日、同じものを作っていると欠点ばかり見えてしまい、スランプに陥ることも。「100円ショップでも買えるものを、これだけ手間暇をかけて作っている。その意味を作品に宿らせていかないと価値がない」。金属と向き合い、人々の生活を彩る作品を届けていく決意がにじんだ。