自転車好き 学びの場に活気

松本情報工科専門学校 スポーツバイシクル学科2期生迎え

田園、高原、山岳、林間、湖周…。スポーツとして自転車を楽しむ舞台がそろっている信州で、スポーツバイシクルにずっと関わっていきたい自転車好きたちが、教室で、野外で、スキルを磨く。
昨年度、全国でも珍しい「スポーツバイシクル学科」を開設した松本情報工科専門学校(松本市城西1)。本年度、群馬や福島、沖縄県を含め全国から12人の2期生が入学。コロナ禍による臨時休校が明け、9人の1期生(2年生)と合わせて総勢21人となり、実習にも活気が出ている。
構造や整備のノウハウ、体格に合わせるフィッティング技術だけでなく、正しい乗り方の指導方法、サイクリングイベントの企画・運営や保険に関する知識まで、学ぶ範囲は幅広い。そんな「チャリオタ」たちの学びの場をのぞいてみた。

楽しさ多くの人に伝えて

5月末、実習授業の一環で、松本市の中心市街地にある松本情報工科専門学校から同市梓川のリンゴ園まで、標高差約250メートルをスポーツバイシクル学科の全生徒でサイクリングした。
幾つかのグループに分かれ、2年生が安全で最適なルートをプランニングし、イベント参加者に見立てた1年生を案内する。「ユーザーに自転車を楽しんでもらうためには何ができるか」を、主催者と客の双方の立場から考えるのが目的だ。
体験プランの一つとして榑沼(くれぬま)貴さん(48)のリンゴ園での摘果作業を組み込んだ。園の前には生徒が自分で自転車部品などをカスタマイズしたこだわりの愛車がずらり。専用スタンドがないため平面に整然と並べ、壮観な光景がリンゴ畑に広がった。
作業中も生徒たちの話題は自転車。海外メーカーのホイールについて話していた1年生の桝澤夏輝さん(18、下諏訪町)は「将来は海外で働いてみたい。そのためには語学力も必要。高校時代、あんなに嫌いだった英語だけど、自転車のためなら頑張れると思う」。
摘果作業がはかどり大歓迎の榑沼さんも、「観光と農業、自転車を組み合わせた体験型のツアーを企画してみるのもいいのでは。その時は声を掛けてほしい」と求めた。

メカニックの資格も取得へ

2年生は現在、スポーツバイクメカニック(SBM)の資格取得を目指しロードバイクの分解、組み立て、調整などに取り組んでいる。卒業後は、自転車メーカーへの就職をはじめ、ショップの店員、個人経営者、レースメカニック、ツアーガイドなどへの道がある。
実習では昨年度、松本─白馬間の往復160キロを走破する「アルプスあづみのセンチュリーライド」や、富士見町で開かれた日本最大級のマウンテンバイク(MTB)イベント「シマノ・バイカーズフェスティバル」などの運営も手伝った。
2年生の黒田浩さんは最年長の53歳。「一度きりの人生。好きなことをしたい」と、長年勤めた京都府宮津市役所を早期退職し、昨年度、家族を京都に残して単身で入学した。
若い頃から自転車に乗ることが大好き。琵琶湖や淡路島を一周するロードレースやイベントなどにも数多く参加した。宮津市内には専門店がなく、本格的なロードバイクを買うには車で2時間かけて大阪や神戸まで行く必要がある。同校で専門知識と技術を習得し、卒業後は地元で自分の店を開くのが夢だ。
黒田さんは「風を切り、自分の力だけで遠くまで行けるのが何よりも魅力。店を持ったら、その土地のおいしい食べ物とか、お客さんとゆっくりと巡るようなツアーを企画したい」と張り切る。

交通インフラ再評価されて

新型コロナウイルスの影響で、海外では密や電車の時間も気にせず走れる自転車が新たな交通インフラとして見直され、急激に売り上げを伸ばしている─。1年生を対象にした特別講義で、同科専属アドバイザーでMTB日本代表監督の鈴木雷太さん(47、松本市)はそう指摘。「このチャンスを逃さず、先回りして顧客の心をつかめるよう今から準備を」「整備だけでなく、スポーツバイシクルの楽しさを多くの人に伝えられるようになって」と激励した。