「天使の竪琴」魅力に触れて

「風を奏でる 」 美しい音色を ― 武田芳雄さん

「天使の竪琴(たてごと)」とは何とロマンチック。指先ではじいた弦から広がる音色は余韻がとても長く、幾つもの音色が重なっていく。ハープが女神の音色だとしたら「エンジェルスハープ」はまさに天使の音色だ。
人が初めて手にした弦楽器とも言われる竪琴。エンジェルスハープは、松本市の楽器製作者、武田芳雄さん(68、梓川倭)がヨーロッパの宗教画に登場する天使が持つ竪琴をイメージし、5年の歳月をかけて研究。12年前に完成させた。
エンジェルスハープの美しい音色を多くの人に知ってもらい、その魅力に触れてほしいと、普及に力を入れる武田さん。その活動の一環で、19日に信毎メディアガーデン(同市中央2)前のスクエアで無料のコンサートを開く。

普及に向けて販売や教室も

武田芳雄さんの自宅に併設された工房「オフィス・ドルチェ」を訪ねた。幾つかのエンジェルスハープが並んでいる。アルダー材でできており、高さ64・5センチ、幅40センチ。板の両面に弦を張った珍しい構造だ。ピアノに例えると、表は白鍵で全音階配列、裏は黒鍵で半音弦にあたるという。
「まろやかで、何とも言えない響きでしょう」。武田さんが賛美歌「アメイジング・グレイス」を弾いてくれた。優しい音色は、曲名の「素晴らしき恩寵(おんちょう)」にぴったりのイメージだ。
武田さんはエンジェルスハープの普及に向け、製作・販売と教室の同時進行で愛好者を広げる活動を展開。県内外で開いている教室には合わせて50人ほどが通っており、中には90代の生徒もいるという。

古典音律知り試行錯誤重ね

愛知県出身。ベンチャーズなどに憧れ、15歳の時にエレキギターを始めたのが弦楽器人生の始まりだ。大学卒業後、楽器製造の仕事に就き、これまで、バイオリン、クラシックギター、マンドリンなどの楽器を作り、演奏してきた。30歳ごろ、弦音楽の勉強をするなら「楽都・松本」で|と移住。50歳で独立した。
エンジェルスハープを作ろうと思い立ったのは独立して5年目。仕事でけがをして2カ月間休んだ際に読んだ本で、現代の一般的な「平均律(1オクターブを12に均等配分した音律)」とは違う「古典音律」を知ったのがきっかけだ。
武田さんによると、古典音律はルネサンス時代に考案された調律法で、例えば「ミ」の音をやや下げたようになり、和音のハーモニーが美しいのが特徴。シューベルトやショパン、ドビュッシーの時代までは主流だったという。この音律に合った楽器は文献以外にはなかったことから、演奏できたら楽しそうーと開発に着手。試行錯誤を繰り返し、完成させた。

各地の小さな会場でコンサートを開いてきた武田さん。「風を奏でる」と名付けて信毎メディアガーデンで開く演奏会は、屋外での演奏としてはほぼ初めてと言う。約1時間、キーボードとのコラボレーションで、クラシックやスタジオジブリの映画主題曲などを披露する。モンゴルの伝統楽器「馬頭琴」の演奏もある。
「コロナ禍で元気がなくなっていた街に音色を響かせられるのがうれしい。アコースティックな音を楽しんでもらい、録音や録画をして家で聴いてもらってもいいですよ」と武田さん。

「風を奏でる」は午後6時半~8時。予約は不要。弦楽器工房オフィス・ドルチェ℡090・4180・7511