雪形出現-里の人々元気付けて 乗鞍岳山肌に3態

「打者」「雷鳥」「鯉」─夢と癒やし

梅雨入り直前の10日午前、松本市街地やその周辺から望む乗鞍岳(3026メートル)の山肌に3態の雪形が浮かび上がった。サッカー松本山雅FCの試合再開を待っていたかのような「雷鳥」、コロナ禍後の上り調子への期待を感じさせる「鯉」、白球を追う姿が戻りつつある野球の「バッター(打者)」。里の人々を元気付ける雪形を紹介する。
伝承雪形の「雷鳥」は黒型(ネガ型)。山頂(剣ケ峰)右側の稜線(りょうせん)直下に乗鞍岳の「紋所」さながらに現れる。頭や目、くちばしも雰囲気があり、胴や尾羽がリアルだ。乗鞍観光協会会長の福島眞さん(68)が大正5年生まれの父親から伝え聞いた。
例年、4月中旬ごろかすかに輪郭を現す。降雪で消えたり現れたりしながら5月下旬から6月上旬、乗鞍高原のスモモやコナシの開花に合わせるように整う。完成までを追うと、冬から夏の保護色に変わるライチョウの生態を見ているようだ。
「特に農事暦の役目はないが、季節の移ろいを的確に伝え、癒やしてくれます」と番所の斎藤清誇(きよこ)さん。自宅の玄関先からよく見えるという。
この「雷鳥」を見て夢を膨らませている人がいる。自然公園財団上高地支部所長の加藤銀次郎さん(63)だ。環境省は今夏、中央アルプスで国の特別天然記念物ライチョウの個体群復活作戦に乗り出す。「乗鞍のライチョウの命が中央アルプスで息づき、復活してほしい」と加藤さん。
「鯉」の雪形は県内では6態あり、全て白型(ポジ型)。八ケ岳の編笠山に2態、浅間山に3態が現れるが、乗鞍岳の「鯉」が最も大きく立派だ。左向きに泳ぎ、頭と胴体は乗鞍大雪渓がかたどり、長い尾ひれは摩利支天岳(2876メートル)の斜面に上っている。躍動感があり、松本市街地からは少し太めに、乗鞍高原の番所からはスリムに見える。
「バッター」は、剣ケ峰の下部に白型(ポジ型)で現れる。近年知られるようになったニューフェースだ。バットを握った手や構える雰囲気はイチロー選手のようにも見える。コロナ禍で大会が中止となって無念の思いを募らせた球児たちの姿にも重なり、想像力を刺激する。
共演する3態の雪形を、カッコウが鳴く乗鞍高原でレンゲツツジの花を間近に観望すると感動が癒やしとなって伝わってくる。
(丸山祥司)