【松本まちなか遺産めぐり】#1 大日堂(上) 小笠原氏が戦勝祈願の伝承

松本市沢村1。かつては城下町の北のはずれだった閑静な住宅地にある大日堂。戦国時代あるいはそれ以前からの歴史があるとされ、住民が「地域づくり」の核にと位置付ける文化財だ。
本尊は大日如来。堂内には木造大日如来坐(ざ)像をはじめ、不動明王立像2体と毘(び)沙門天(しゃもんてん)立像が安置されている。この4体が、県立歴史館(千曲市)が昨秋開いた企画展「戦国小笠原三代」で展示された。紹介文には「小笠原長時の祈願仏という伝承がある」と記された。戦国時代、信濃守護の長時が武田信玄との戦いを前に戦勝祈願をしたと伝わる。
大日如来像の高さは台座も含め29センチ。室町時代の作とみられる。「中央(京都)か、その影響を受けた仏師の作ではないか。貴重な作品」と、県立歴史館文献史料課の村石正行さん。
ただし、堂は地元の沢村町会が管理し、通常は本尊を拝むことができない。町会では毎年3月に公民館で行う地域の安全を祈願する「数珠回し」の際、堂を開けて参拝することにしている。数珠回しはかつて、堂内で行っていたという。
境内の東端には大小2つの道祖神が並ぶ。高さは70センチと50センチほど。松本平では双身体が多く見られるが、「道祖神」と字だけを刻み、大きい方の裏には男子の性器が描かれている。「石工のおおらかな遊び心が偲(しの)ばれる」と説明文にある。建立は安政6(1859)年、幕末の激動期だった。

国宝松本城、旧開智学校などの歴史的・文化的資源を抱える松本市。全国的に著名なもの以外にも、江戸時代の城下町を中心に生まれた遺産は数多い。人々の暮らしと結びつき、今日に受け継がれる「地域の宝」を訪ねてみたい。