米コンテスト優勝歌手・高橋あず美さん 地元乗鞍で新たな道

新型コロナ変えた人生の道筋

インターネットによるラジオ番組やライブ活動、地元を紹介する動画配信…。松本市安曇の乗鞍高原から、歌手としての新たな道を歩み始めた。
昨年11月、歌手やダンサーなどプロへの登竜門となる米ニューヨークのコンテスト「アマチュアナイト」で、日本人歌手として初めて年間優勝した高橋あず美さん(33)。今年1月公開の米映画「キャッツ」の日本語吹き替え版で、中心曲「メモリー」を歌う「グリザベラ」も担当するなど活躍の幅を広げている。
年間優勝者の肩書きをステップに、歌手としての飛躍を図ろうとした時、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大。居を構えていた都内を離れ、ステイホーム先にした古里の乗鞍高原で再会した昔の仲間との交流や古里への思いが、人生の方向を変えた。

米国旅行で転機歌声に拍手喝采

高橋あず美さんは、洋楽好きだった父親の影響で物心つく前から「カーペンターズ」などを歌い、小中学校時代はクラブや部活動で合唱に励み、中学校の友人とバンド活動もするなど音楽とともに育った。
専門学校を卒業後、ドリームズ・カム・トゥルーなど有名アーティストのバックコーラスを務め、自身で作詞作曲した曲もリリース。「実力派シンガー」としての地歩を固めていった。
転機となったのは2018年、今後の生き方について考えようと米国内を旅していた時だった。ニューヨークの地下鉄駅構内でストリートライブをしていた米歌手シャニースさんに出会い、高橋さんも飛び入り参加。そこで聴衆から大きな歓声や拍手を受けた。「自分はアメリカでは通用しない」。最初からそう思い込んでいた自分の中で何かがはじけ、18歳から憧れていた「アマチュアナイト」への挑戦を決めた。
毎週水曜日に開く予選(300組出場)、月1回開く「ショーオフ」、3カ月ごとに開く「トップ・ドッグ」を突破し、年間優勝者を決める「スーパー・トップ・ドッグ」の10人に入った高橋さん。会場に集まる約2000人の聴衆の拍手の大きさを数値化して決める得点方式で、トップに輝いた。
「初めて自身のために、今までにない『わくわく感』を感じながら歌うことができた」と高橋さん。「(歌手人生で)心がつらくなることもあったが、つらい経験が、今の声、歌をつくった。ハッピーなだけでは人の心に(歌が)届かなかったかもしれない。諦めずに歌い続けてきてよかった」。挑戦が自身の成長を促す原動力だと感じた。

都内離れ実家へ古里のため何か

栄誉を手に「歌手として一気に駆け上がろうと思っていた」(高橋さん)時に新型コロナウイルスが広がり、ライブなどほとんどの仕事がキャンセルに。都内を離れ、古里に戻ってきた。
実家を離れてから古里で数カ月もの期間を過ごすのは初めてだった。小、中学生時代をともに過ごした友人らと、地元が抱える問題や未来について熱く語った。そうするうちに「古里に恩返しをしたい」との思いが膨らみ、地域振興の活動に加わった。
その一つが、のりくら温泉郷のサイトで発信する動画「おうちでのりくら」の制作。自粛生活を、乗鞍の自然や個性豊かな住人とともに楽しんでもらおうと企画した。料理や登山に詳しい住人らから、高橋さんが手ほどきを受ける内容だ。動画を見た人から「乗鞍に行きたくなった」との感想も届いた。
ほかにも、ラジオアプリ「Spoon」で歌やトークを届け、今月28日にはツアーで共演しているギタリスト「HISA」さんと15曲ほどを歌う有料ライブ配信も予定する。コロナ禍を機に、都内でなくても歌手活動できる可能性を見いだした高橋さん。乗鞍高原発の活動をさらにパワーアップさせていく。

「Spoon」のライブ配信は土、日曜の午後8時半~10時半(「AZUVOICE」でサイト内を検索)。28日午後5時からの「のりくらで生配信アズヴォイス」はチケット制で、料金は2000円。ライブイベント販売アプリ「TiGET」で。