独学で挑む村唯一のサクランボ栽培

朝日村内を流れる鎖川沿い、同村針尾にあるサクランボ園。計13アールに植えられた「佐藤錦」や「ナポレオン」など4品種約70本の木が、つややかな赤い実を付けている。園の主は古見の上條正光さん(60)。野菜が特産の村では異色のサクランボ農家だ。
会社を定年退職した後は農業を―と考えていた上條さん。庭のサクランボの木が毎年実を付け味わっていたこともあり「珍しく、みんなに喜ばれるものを」と思い立ち、51歳から苗木を植え始めた。
その後、昨夏までの4年間は海外赴任となり、植えた木も放置状態に。今春退職し、村唯一のサクランボ生産者として第二の人生を歩みだした。
兄の手を借り、今月半ばに雨よけと防鳥のためのハウス全7棟を建て終えたが、実が付く前にビニールとネットを掛けられたのは全体面積の約半分。「ハウスを建てている目先で鳥が実をつついていた」と笑う。
それでも「こんなに実がなっている状態を見るのは初めて」と上條さん。ただ、出荷するには量、質ともまだ不十分。作業性や日当たりの改善に向け、上に枝が伸びている現在の樹形を横に広がるよう剪定(せんてい)し直す必要もあり、再来年以降の本格出荷を目指している。
上條さんは野菜農家に生まれたが、果樹栽培の経験はなく、サクランボの栽培管理は山形県の農家が書いた本が頼りの独学。「植えてはみたものの、試行錯誤。小学校1年生ですよ」。枯れてしまう木があったり、木ごとに味のばらつきが出たりと四苦八苦。病害虫対策など全てが手探りだ。「でも楽しい。頑張った分だけ返ってくる」と、表情に充実感がにじむ。
村を訪れるきっかけやPRにもなればと、サクランボ狩りの夢も温める。みずみずしく甘酸っぱい味、上條さんのカラっとした明るさは、梅雨のどんよりした気分を吹き飛ばしてくれるようだった。