初版完売のビジネス書 絶版の危機越えオール松本で再出版

舞台は松本市を連想させる街にあるスーパー。「松本さん」「長野さん」「飯田さん」など、信州の地名と同じ名前のキャラクターが登場する。
「マンガでよくわかるパートさんを集める技術」。同市井川城のパートアルバイト戦力化コンサルタント・赤沼留美子さん(48)が、2018年に都内の出版社から発行した自身初の単行本だ。
「求人を出しても、さっぱり応募がない」「せっかく働き始めたのにすぐに辞めてしまう」。こんな小売業の現場での悩みを、分かりやすく解説する。
漫画も同市内のペン画家職人が担当。初版はほぼ完売、増版へ-となるはずだったが、コロナ禍の影響で出版社が倒産。絶版の危機を救ったのは、同市の印刷会社だった。作、絵、出版と「オール松本」で再出発する。

「漫画入り」好評 珍しいスタイル

「マンガでよくわかるパートさんを集める技術」は、小売りや流通業を対象とする専門誌の発行を手掛けた「商業界」(東京都)から出版。漫画は五味美穂さん(55、松本市笹部)が担当した。作者の赤沼留美子さん同様、五味さんにとってもデビュー作だ。
書店や通販サイトに加え、赤沼さんが経営するコンサルティング会社「スマイル・ラボ」が全国で開催しているセミナー会場などで販売。ビジネス書には珍しい「漫画入り」のスタイルが好評で、初版の6000部はほぼ完売し、今春に増版の予定だった。
ところが今年4月、コロナ禍の影響で「商業界」が倒産。会社を設立した2004年以来、スーパーのパート・アルバイト求人・定着支援に取り組み、そのノウハウを詰め込んだ自身初のビジネス書をこのまま埋もれさせたくない-。赤沼さんは版権を含め、本のデータを「商業界」から買い取り、新たな出版先を探した。
異業種交流会などで面識のあった成進社印刷(同市深志2)社長の北原修さん(52)に相談。赤沼さんの熱意に打たれた北原さんは協力することに。しかし、自費出版は手掛けたことはあったが、全国流通する本の出版は初めて。「本を作ること自体はそう大変でもなかった。どうやったら通販サイトなどに出せるのかなど、販路を調べるのに苦労した」と北原さん。
2カ月ほどの間に、本の紙質や色などを研究。「松本で出版したら『質が悪くなった』などと言われたくなかった」。初版とほぼ同じものに仕上がった。「今回、こうした経験をさせてもらい、今後、出版を希望する人の手伝いができる」。北原さんも、新たなビジネスへの道に手応えを感じたようだ。

街並みや人物名 信州人に親しみ

「マンガでよくわかるパートさんを集める技術」は10章構成。「人手不足でへとへと…脱出法はありますか」「応募を増やす技術」など各章ごとの課題や問題点を、まず4ページ前後の漫画で明確にし、その後、文章で解説するというスタイルだ。
赤沼さんによると、「商業界」が出版したビジネス書で漫画が入った本はこれ以外にはない。出版する際、漫画を省くよう同社から説得されたものの、構想段階から「絶対に漫画を入れる」と決めていた赤沼さんは譲らなかった。
漫画に描かれている街並みは松本市内を連想させる。舞台となるスーパーの店長「長野さん」や、その高校の同級生で都内の飲食チェーンで教育担当を務める「松本さん」ら登場人物によるトラブル対応などが描かれている。人物名などに信州の地名が付けられ、信州人には親しみやすい内容だ。
アマゾンなどの通販サイトで購入できる。1500円(税別)。