天然芝香るサッカー場 日々の管理余念なく

地元に愛されつづける大町市運動公園サッカー場

天然芝のピッチは青々として美しい。独特の匂いはプレーの記憶と強く結び付き、ノスタルジーを誘う。
大町市常盤の市運動公園サッカー場。やまびこ国体に合わせて1977(昭和52)年に完成した。当時、天然芝のサッカー場は県内では珍しく、大町のサッカー文化の発展を支えてきた。市教育委員会体育課が管理。通常は練習には使わず、大会用に貸し出している。
5、6月、市内のサッカーチーム関係者らがボランティアで草取りに協力。作業の後は「草取りのお礼に」とピッチが開放され、選手らは思う存分ボールを追い、天然芝のフィールドを満喫した。
地元アマチュア選手たちの憧れと誇りであり、熱戦の舞台ともなってきた天然芝のサッカー場を訪ねた。

初夏の日差しがまぶしい昼下がり。大町市運動公園サッカー場に乗用芝刈り機の音が響き、運転する施設管理員歴約10年の奥島和人さん(57)が汗を拭った。
芝刈りは週3日、全面を刈るのに2時間ほどかかる。芝刈り後のピッチには爽やかな匂いが漂っていた。「状態は毎日違う。調子が悪いと気になり、朝早く来てみたり。快適にプレーしてもらうのが一番ですね」と奥島さん。芝刈り機の手入れにも余念がない。
広さは約8500平方メートル、観客の収容人数は芝生スタンド込みで約2500人。ピッチは完成当時は高麗芝だったが、スポーツ振興くじ(サッカーくじ)助成金を活用した2009(平成21)年の大改修で西洋芝に。5人の施設管理員が、市管理のほかの体育施設と併せ、日程を組んで芝管理に携わる。
芝草は寒冷地型(冬芝)で、春から秋にかけて刈り込む。散水や施肥、除草、地面に穴を開けて土中に空気を入れる作業など、日々の管理で状態を保つ。損傷箇所は、公園内多目的芝生広場の差し支えない場所から芝生を抜き取り移植。秋口に種まきをして養生する。
「芝はとてもデリケート。一晩で枯れてしまうこともある」。そう話す長野Uスタジアム(長野市)ヘッドグラウンズマンの青木茂さん(48)は、この道30年のベテランだ。大改修以降、芝生管理アドバイザーとして、シーズン中は月1回ペースで1カ月先までの管理について細かく指導する。
6月半ば、大町を訪れ、夏場に向けた散水や施肥のタイミングなどを綿密に指導した青木さん。「密度が増し根の張りが良く、適度なクッション性があり凸凹も少ない。全体的にいい状態」。通気性、十分な日照、散水に使っているきれいな地下水という自然的条件に加え、「職員の熱意もあるのでは」と指摘する。

同サッカー場は、公園内の至近距離に芝フィールドの陸上競技場、土の多目的広場がある環境、夏でも冷涼な気候が競技者には歓迎され、県外チームが参加する大会も数多く開いてきた。
2012(平成24)年には、女子が正式種目になり大町北高校(当時)が出場した全国高校総体の会場に。ほか、天皇杯県予選や皇后杯北信越・県大会、北信越・県高校総体、全国選抜少年大町大会、おおまぴょんカップ女子大会、松本山雅FCの練習試合なども開かれてきた。
「試合や観戦が身近でできる環境は市民のサッカーへの関心を引き、他地域に大町を知ってもらえる効果をもたらしているのでは」と、市サッカー協会の平林求仁男会長(63)。女子クラブチームのFC大町タフィタの川原幸子代表(57)は「天然芝サッカー場が地元にあるのは誇りで幸せ。協力して大事にしていきたい」と話す。
新型コロナウイルスの影響で、大小かかわらず大会の中止が相次いだ今季。草取りに参加し、天然芝でのプレーを楽しんだ大町FCの高橋幸翔君(9)は「(管理の)大変さが分かった。ここで試合するのが楽しみ」。FC大町タフィタトップチーム主将の横澤葉月さん(24)も「貴重な天然芝でのプレーはテンションが上がる。地域の宝ですね」と笑顔を見せた。