知的障がいのある男女がスタッフ

支えてくれた人への感謝胸に
働き学ぶ意欲高く地域と交流広がる

健康マージャンサークルでのボランティアスタッフとしての活動が、知的障がいのある男女の同居生活に張りを与えている。
塩尻市広丘のマンションで一緒に暮らす瀬端里織さん(44)と井本泰一さん(40)。松本市が拠点の健康マージャンサークル「縁ジョイ」で、6月から毎週月~木曜日、会場設営の業務をこなす。
2年前、2人で「縁ジョイ」の無料体験会に参加。そこで、サークルを主宰する岡田和彦さん(60、松本市出川)から勧められ、スタッフに。このことが2人の環境を変えた。
家の外に出るきっかけとなり、働き学ぶ意欲も高まった。サークルの会員たちとの会話や交流など地域との関わりが広がったことが2人にさまざまな「気付き」をもたらしている。

週4日の活動毎日の励みに

瀬端里織さんと井本泰一さんが精神科の入院病棟で知り合い、4年ほど前から同居し始めた。当初、さまざまな事情で不安定だった井本さんが、家財道具を壊してしまうなど、波乱に満ちた同居生活のスタートだった。
「井本さんの姿が昔の自分と重なり、つらかったであろう(自分の)両親の気持ちに気付けた」と瀬端さん。
2年前、健康マージャンサークル「縁ジョイ」の無料体験会に誘ったのは瀬端さん。自身はマージャンの経験はなかったが井本さんは心得があり、当時、引きこもりがちだった井本さんが外で楽しめれば─と参加した。今は行政や医療機関の支援を受けつつ、週4日のボランティア活動が励みになっている。
「この生活を大切にしたい」。そう考えた2人は昨夏、受給している障害者年金の管理を岡田さんに頼み込んだ。家賃や光熱費などを除いたお金を管理してもらい「無駄遣いがなくなって毎日が楽しい」と2人。岡田さんは一度は断ったものの「中途半端にお付き合いしてはいけない、全力でぶつかってできることはすべてやろうと心に決めた」と振り返る。
「私、電話魔なんです。すぐに岡田さんの声が聞きたくなっちゃう」と瀬端さん。岡田さんは、そんな瀬端さんの愚痴や不安を、じっくりと、何度でも聞いてきた。信頼を寄せられ、今では買い物や通院に同行するほか、ケア会議にも出席。講演会を聞くなど障がいについても学んだり、時には食事やドライブに誘ったりもしながら2人を支えている。

居場所を得て次の夢へ挑戦

6月24日、この日の「縁ジョイ」会場となっている塩尻市の「えんてらす」。2人は定刻30分前から準備を始めた。参加人数に合わせて岡田さんが運び入れたマージャン卓6台を手際よく組み立て、椅子と共に配置していく。受け付けをする岡田さんの近くで、瀬端さんは「〇〇さん、久しぶり」、井本さんは「〇〇さん、こんにちは」と声を掛け、笑顔で出迎えた。
曜日ごとに活動時間と会場が決まっている「縁ジョイ」は、2人の生活にリズムを与えている。「礼儀正しく気遣いもしてくれる。サークルの皆が応援している雰囲気」。この日参加した白木光子さん(71、松本市寿台)はそう話す。

大切な居場所となった「縁ジョイ」での活動は、2人が「次」へ進むステップにもなっている。
「瀬端さんにウエディングドレスを着せてあげるのが夢」。そう話す井本さんは、新型コロナウィルス感染拡大でサークルが休みだった間、岡田さんの紹介を受けてアルバイトに挑戦。今後は行政の就労支援を利用するなどして仕事に就きたい考えだ。
「自分の経験を話すことで人を元気づけたいし、岡田さんのように健康マージャンと福祉をつなぐ活動もしたい」。そう話す瀬端さんは、岡田さんをはじめこれまで支えてくれた人たちへの感謝を胸に、当事者が障がい者の自立支援を行うピア・カウンセラーを目指して学んでいる。「仕事に就けたら、両親に支援してもらったお金を返したい。壊しちゃった家財の分もね」と笑顔を見せた。