「標高箸」で少しでも明るく

「標高箸」を考案 佐藤光孝さん 松本市

奥穂高岳319・0ミリ、上高地150・0ミリ…。山のミニチュアではない。標高の1万分の1の長さで、名付けて「標高箸」。
松本市大手1の薬剤師、佐藤光孝さん(78)が考案した。「めおと箸、えと箸などいろんな箸がある。信州なら山の標高を表す箸があってもいいのでは」
2016年夏、北アルプスを縦走し上高地を歩いていた時、アイデアが浮かんだ。この年初めて実施された国民の祝日「山の日」を記念し、上高地、涸沢(春、秋の2種)の計3種類の箸を作った。
今年は2020年にちなんで、北海道大雪山系の緑岳など、202・0ミリの箸3種を作った。コロナ禍や災害続きの中で迎えた夏山シーズン。「少しでも明るさ、楽しさのタネになれば」と話す。

新しいものに興味常に挑戦

2020メートルの山最新作は「緑岳」

「新しいものに興味を持ち、それを記録に残したい。工夫して自分好みの世界をつくりたい。オタクですね」。「標高箸」を考案した松本市の佐藤光孝さんは、そう話す。
最新作の緑岳などは、西暦年にそれと同じ標高の山へ登る「標高年登山」にヒントを得て、標高2020メートルの山を取り上げた。
箸の台紙に付ける3・5×5センチのイラストに、佐藤さんのこだわりがのぞく。制作は成進社印刷(同市深志2)の営業部長春宮誠さん(55)、アートディレクター堀内英樹さん(42)が担当。佐藤さんが山の写真を基に心象風景や強調する点などを指示し、堀内さんが作品にしていく。
タッチは切り絵風で「シリーズとして統一感を持たせるようにしてきた」と堀内さん。佐藤さんは「イラストは写実性のみを追求するのではない。その山が持つ特性を描いてもらった」。緑岳には大雪山系の一部に咲く「ダイセツヒナオトギリ」を入れた。昨年までに作った常念岳はハクチョウの「北帰行」、中ア・千畳敷カールは、最も標高の高い場所で咲く「タカネザクラ」を配した。

シニア実践塾が「起業」を後押し

佐藤さんは仙台市出身。薬剤師の資格を得て製薬会社に勤務したが、関東甲信越地区の担当をしていた二十数年前、信州が好きになり松本へ移住。60歳の定年を機に、松本地方の病院から誘いを受け、現在も薬剤師として働いている。
70代にして、佐藤さんの挑戦は続く。2016年、メディア通商(岩本弘社長、長野市)が開いた「シニア起業実践塾」を受講した。塾は現役時代の経験を生かした起業を後押しする。17年2月には、塾生らが成果や苦労話を披露するセミナーで、発表者7人の一人に。
この場で発表したのは、標高箸と、特殊ナイフ「U&Lナイフ」の2題。ナイフは長さ10センチ余で鳥のような格好をしている。名前のUは「鈎(かぎ)、碇(いかり)」、Lは「穿刺(せんし)針」の意味。たとえば飾り切りやらせん切り、ミカンの皮むきなど、家庭や職場、病院などで使えるという。
標高箸が山という趣味から生まれたのに対し、ナイフは薬剤師の仕事から生まれた。「やはり必要は発明の母ですよ」

佐藤さんは標高箸について、ホテルや山小屋、土産店などでの販売を模索する。新型コロナウイルスの感染症の広がりで控えていた活動を最近やっと再開し、企業の設立を準備中。「自分の肩幅の中でやっていきたい。起業してもうけるというより『うれしい、楽しい、面白い』を大切にしたい」。起業は、工夫して楽しむ人生の一こまと位置付けているようだ。

【標高箸】
16年に商標登録。種類は北アルプスなど県内の山を中心に40ほどで、価格は未定。若狭塗り箸の製造卸を手掛ける福井県小浜市のマルゼンが製作し、購入希望などは今のところ同社が受け付けている。問い合わせはマルゼン電話0770・52・5271