静寂の中4カ月ぶりライブ 地元ロックバンド「シールスリープ」

ライブハウスの床には一定間隔で客の立つ位置がしるされ、ステージと客席は透明のビニールシートで隔てられていた。客たちは律義に目印の上に立ち、ステージを眺めたり知り合いと話したりしながら、バンドの登場を待っていた。
開演時間になり、バンドメンバーがステージに現れても歓声は上がらなかった。会場には「この瞬間を待っていた」との熱い思いだけが充満していた。
松本市の駅前大通り沿いにある収容人数230人のライブハウス「松本アレックス」。ステージには、地元のロックバンド「SHE’ll SLEEP(シールスリープ)」。
「夜を越えてく日々を紡いでいく夜を越えてくその手を繋(つな)いでいく-」。今月19日、4カ月ぶりに歌声が響き、ライブが戻ってきた。

状況受け入れ万全なライブを

「シールスリープ」はボーカル&ギターのユウ(今田優作さん、20=白馬村北城)、ベース&コーラスのタツミ(小林辰海さん、19=岡谷市)、ドラム&コーラスのソウタ(唐澤爽太さん、18=安曇野市明科七貴)の3人。
彼らが高校1、2年生だった18年3月に結成。松本を拠点に各地で精力的にライブを重ねると人気を集め、今年3月、大阪のインディーズレーベル「ザ・ナインス・アポロ」と契約。7月8日、初の全国流通となるアルバムCD「AWAKE」をリリースした。
これに合わせ、全国13カ所を巡る「レコ発ツアー」を企画。19日のライブはツアー初日で、彼らにとって初の単独ライブ。1時間で17曲を熱唱した。
ライブの開催可否は新型コロナウイルス感染の状況を見ながら判断し、すでに開催延期となった会場も。「ライブハウス、客、僕らがしっかりコロナ対策をして臨む。あとは強い覚悟でステージに立つだけ」と話す。

日常つづった詞疾走感ある曲に

バンド結成の軸となったのはユウ。入学した白馬高校には軽音楽部のような部活がなかった。松本のライブハウスに足しげく出入りしコピーバンドをやりながら、自分で曲を作り始めた。2年生になると自作曲も増え、それを発信するバンドの結成を決意。ライブハウスで仲良くなった同い年のタツミを誘い、音楽仲間の紹介でソウタと出会った。
ユウは小さなころからピアノを弾き、中学生でギターやベースを独習。ソウタも小学校低学年からドラムをたたき、金管バンドや吹奏楽で打楽器を担当。バンド経験こそ4~5年だが、技術とセンスが光る。
作詞作曲を手掛けるのはユウ。AWAKEの収録曲を見ると、ほとんどの曲が「自分」と「あなた(君)」の関係性を歌っている。そして、2人の距離は近すぎず遠すぎず、絶妙な余白がある。
また、頻繁に登場する空、街、朝、雪など言葉が「自分の居場所」のようなものを感じさせる。
「聴き手が詞の世界に自由に意味を付け、曲を自分のものにしてほしい」とユウ。
曲は疾走感のある激しい演奏だが、メロディーはどこか切なく、哀愁が漂う。日常を日本語のみでつづる歌詞と相まって、聴く人に寄り添うような優しさが楽曲全体を包む。

活動再開に向け腕磨きグッズも

結成当初から目標にしていたという「ザ・ナインス・アポロ」に「一緒にやろう」と誘われたのは昨年8月。今年2月にAWAKEのレコーディングをし、3月に正式契約した。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でライブはすぐに休止。4、5月はメンバー同士会うことすらできなかった。3人は「休止期間に何をするかで、ライブ再開後に差がつく」と、演奏技術の修練や楽曲制作はもちろん、バンドのグッズを増やし、ホームページで通販を開始。SNSを通じてバンド情報を発信してファンとつながるなど、置かれた状況を受け入れ、一歩ずつ前進し続けた。
ライブ中、客席に向かって「油断せずにやっていく。(コロナ対策で)静かに聴くスタイルに抵抗がある人もいると思うけど、俺らは臨機応変にライブをしていくし、ライブハウスに行くのはまだという人も、ずっと待っている」と語り掛けたユウ。ライブ後、「生きる上で音楽を必要としている人たちのためにも、万全の準備をして勇気を持って、ライブをしていく」と力を込めた。