地元の「いいもの」詰め合わせ全国へ

「外」を見て分かる「内」の良さ

新型コロナウイルスの影響で、就職が白紙になった。
松本市沢村の曽根原和花さん(23)。昨年初めて訪れた鹿児島県の与論島に感激し現地で職を探し、今年5月からゲストハウスで働くことが決まった。だが、直前に採用取り消しの通知が届いた。
いったんは失意のどん底に落ちたものの、気持ちや生き方を切り替えるには「今がチャンス」と捉えた。高校、大学と国内外を旅し、常に「外」を意識していた視線を「これまで愛着がなかった」という郷里へと向けた。
松本の「いいもの」を詰め合わせ「ほっかり松本おさんぽ便」と名付けて商品化。販売開始から半月ほどで60箱以上の注文が入った。就職失敗が転機になったが、ずっと前向きだったわけではなかった。

内定消えどん底も地元の魅力気付き

「中学時代は引きこもりで、3年生の時はほとんど学校に行かなかった。いじめられたわけではないけど、人間関係がうまくいかなかった」という曽根原さん。通信制の信濃むつみ高校(松本市南松本)に進学。国内外を訪ねるうちに、視線は自然と「外」へ。
高校2年時の学校行事で、横浜市寿町の簡易宿泊所が集まる地区を見学。日雇い労働者の日常を目の当たりにし「3日間、寝込むくらいの衝撃を受けた」。満蒙(まんもう)開拓団の足跡をたどる中国東北部の旅や、東日本大震災の被災地、宮城県名取市閖上(ゆりあげ)での炊き出しボランティア…。こうした経験を通じ、今まで知らなかった世界に興味を持つようになった。
都内の大学で社会学を学びながら、カンボジア、ベトナム、ケニア、エジプトなどを旅行。4年時は1年間休学し、途上国で非政府組織(NGO)が活動する現場を視察したり、ボランティア活動をしたりする「スタディーツアー」も企画した。
初めて与論島を訪れたのは昨年2月。サトウキビ畑で手伝いをしていた時、お昼に老婆からおにぎりをもらった。そのおにぎりには泥が付いていたが構わず食べた。「その泥さえもおいしく感じた」。与論島のエネルギーに感動し「住むしかない」と職を探し、ゲストハウスへの就職が決まった。
新型コロナウイルスの影響で、就職が白紙になったことを知らせる通知が届いたのは4月の終わりだった。「与論島行きを本当に楽しみにしていたので、心の底から落ち込んだ」と曽根原さん。
「これまで、ほとんど向き合ってこなかった松本の街を散歩してみよう」。そう思うようになったのは、県内の緊急事態宣言が解除された5月中旬。自宅周辺からスタートし、徐々に中心市街地まで足を伸ばすと、今まで知らなかった面白い店があることに気付いた。店に入って店主と話し込むことも。
それを繰り返しているうちに、出会った人と物の魅力にどっぷりとはまった。「魅力ある人たちが丹精して作った物を多くの人に届け、『作った人に会いたい』と思ってもらえる商品を全国に届けたい」。そう思い立ったことが「ほっかり松本おさんぽ便」につながった。
市内の各店を回り、商品の提供を直談判した。「就職が取り消されたら、職安などに行くのが一般的だが、自分で何か始めようとするのがすごい」。山屋御飴所(おんあめどころ、大手2)の太田喜久社長(58)は行動力に関心し、協力を決めた。

友人協力の地図や作り手の思い添え

商品名にある「ほっかり」は「松本が歩いているだけで心温まる場所ということを表現した」と曽根原さん。山屋御飴所の「御あめミックス」、信州SOBA農房かまくらや(大手3)の「蕎麦(そば)かりんとう」など5店の商品と、「松本のきれいな空気を吸って」と、透明な小袋に空気を詰めた「松本エアー」を詰め合わせた。
「おさんぽ便」には、作るまでの経緯や松本の魅力などを伝える手書きの手紙のほか、曽根原さんの友人、佐々木萩乃さん(23、塩尻市片丘)が作った、詰め合わせ商品の店舗や松本城・旧開智学校といった観光名所が載ったマップを添える。
曽根原さんは「外を見てきたからこそ松本の良さが分かる。コロナが収束したら、買ってくれた人たちが交流できるツアーなども考えたい」と話す。
1箱2800円。購入などの詳細は「ほっかり松本おさんぽ便」のフェイスブックページに。