佐藤大史さん初の写真集「Belong」出版 アラスカで撮影した地球の姿

アラスカ山脈の中でドールシープ(北米の山岳に生息する野生ヒツジ)の群れに出合った。標高約2000メートル、午後11時。高台の崖にしがみつきシャッターを切った。北西の空は赤く光り、山脈のところどころでは雨が降っている。生き物はこの場所で何万年も命を循環させてきた。「ここには地球そのものが写っている」という。
安曇野市の写真家、佐藤大史さん(35、三郷明盛)が、米アラスカ州で撮影した大自然を初の写真集「Belong(ビロング)」にまとめ、信濃毎日新聞社から出版した。2015年から年に数カ月、現地に滞在して撮影した作品の中から88点を収録した。
精いっぱい命を燃やす動植物、悠久の時の流れが伝わる大地…。「作品から地球を感じてほしい」と話す佐藤さんにインタビューした。

【写真集のタイトル「Belong」について】
直訳すると「属する」。アラスカの生き物も私たちも共通して属している「地球」を感じてほしいという思いを込めました。
日本の4倍の面積があるアラスカ。撮影計画はもちろんありますが、実際に撮った写真の半分以上は偶然の出合いです。
原野の中にさまざまな生き物がいるので探してみてほしい。引き潮が描いたシュプールと、氷河に削り取られた山肌を隣り合わせて掲載したページがありますが、一瞬でできて二度と同じ模様にならないもの、太古の昔から続く形など、多様なタイムスケールで物事が動いていると感じてもらえたらと思います。何回見ても新しい発見がある。そんな内容にしたかったのです。
作品1枚1枚に背景があり、思い入れがあります。中でも、グリズリー(ハイイログマ)の写真は語りたくなります。何回も撮影に行っているので知っている家族もいます。熊は1頭1頭、性格が違うし感情が表に出やすい。人間の赤ちゃんのような表情をしている子グマの写真もあります。

【なぜアラスカなのか】
私の撮影のテーマは「地球、命」。日常で忘れがちな大事なことを伝えたいのです。
地球環境を考えると、人が経済活動を優先した影響もあり、いろいろな生き物が絶滅したり大量発生したりしています。より多くの生き物が、より長い生を全うする未来のため、命や地球を感じてもらう機会を増やしたい。そのためにできるだけ大きな自然に挑もう-と。
その撮影場所として、アラスカ、アフリカ、南極を検討し、体力、資金力、言葉の問題などを踏まえ、アラスカを選びました。
「命」については、持病を持って生まれ、10歳で死んだ愛犬「ムギ」から影響を受けました。一生懸命生きたムギに胸を張れる生き方をしたい。そう感じました。

【過酷な撮影環境】
誰もいない原野を10キロほどのザックを背負って地図とコンパスを頼りに歩き、テント泊しながら動物を探します。電池や食糧が尽きたら街に戻って補充して原野に行きます。
生き物よりも自然現象、中でも強風が一番怖い。テントごと飛ばされてしまうのでは-とか、稜線(りょうせん)を歩いている時は体を持っていかれるのでは-と思うことも。川に流されたり崖から落ちたり、水が手に入らず命の危険を感じたことも。熊に近くで威嚇されたことや、つきまとわれたこともありました。

【今後の目標】
新型コロナウイルスの影響で今年はアラスカには行かず、主に安曇野で「日本の森」をテーマに活動しています。森に携わる人、生き物、歴史、林業などを撮り始めています。
例えば身近な木1本でも、そこに生きている生き物がいたり、何のために植えられたのかなど、見方を変えただけですごく奥行きが生まれ、新しい発見があります。
コロナで新しい生活様式となり、価値観も変わっていますが、皆さんがその中でそれぞれの命を燃やしてほしい。生きる豊かさを自然界から感じてもらえるような写真をこれからも撮っていきたいと思います。

写真集はA4変形判、104ページ、2860円。県内の主な書店と、信毎メディアガーデン(松本市中央2)1階で販売。9月12日から信毎メディアガーデンで出版記念の写真展を開く。入場無料。

【プロフィル】さとう・だいし1985年、東京生まれ。日本大芸術学部写真学科卒。写真家・白川義員さんの助手を経て2013年に独立。11年から安曇野市に本拠地を置く。17年、エプソンフォトグランプリの三好和義賞受賞。

(写真は 佐藤大史写真集「Belong」より )