“印刷のコンビニ”1枚から即時対応

白馬村の簡易印刷所「covs」

「店のメニュー表を1部だけ、今日中にほしい」「店頭に掲示する表示をラミネート加工だけしたい」。そんな依頼に即座に応える“印刷のコンビニ”が白馬村北城に登場した。
店舗型の簡易印刷所「covs(コブス)」。持ち込んだデータや素材を1枚からでも即時にコピーしたり出力したりできる。高品位出力のオンデマンド印刷機や断裁機、紙折り機を導入。多様な紙への印刷、冊子や折り畳みのパンフレット、ステッカー、封筒などがその場で作れる。
開設したのは、村内にある同名のデザイン事務所代表で、グラフィックデザイナーの太田祐一さん(34)。民宿など個人事業主や家族経営の多い土地で、少量、短納期の印刷需要に応える“駆け込み寺”を目指す。

印刷の可能性を知ってほしい

カフェのようなたたずまいの店舗型簡易印刷所「covs」は、白馬村の観光スポットの1つ、大出公園の近くにある。太田祐一さんの自宅倉庫を大掛かりに改装した。コンビニなどにあるセルフ型の複合機のほか、事務所とバックヤードを兼ねた奥のスペースにはオンデマンド印刷機をはじめ、各種機材が並ぶ。手動の断裁やホチキス留めなどの作業ができる場所も設けた。
村内で宿泊施設やコワーキングスペースを経営する田中瑞人さん(37)は、配布しているステッカーの在庫が少なくなり来店した。ロゴを複数配置したデータをステッカーシートに印刷、断裁は自ら手作業で行ったが、従来1週間以上かかっていた納期が即日に短縮。「ちょっとほしい時や、いざというときに近くにあって便利ですね」
店ではコーヒーやアイスクリームなども提供し、印刷を待つ間に楽しめ、カフェとしても利用できる。
「A3サイズのステッカーは作れるか」「家族の誕生日に写真をポスターにして贈りたい」「仕事のプレゼン資料をコート紙で1部だけ印刷したい」。3日の開店以来、そんな相談や利用が飛び込んでいる。

個人事業主らの需要に応えたい

太田さんは白馬村出身。県外の大学で家具デザインを学び、就職した家具・インテリアの販売会社では、販売を担当した。売り場の値札やポップを手掛けたことでグラフィックデザインの面白さに目覚めて転身を決意。東京の会社でグラフィックデザイナーとして活躍してきたが、2016年に独立、長女の誕生を機に子育て環境を重視して17年に帰郷した。
さまざまな企業の販促デザインを手掛けてきた経験を、地域の観光やビジネスの加速に生かせればとの思いは強く、デザインの価値を徐々に認めてもらいながら地元からの仕事の受注を増やしてきたものの、もどかしさが募った。
印刷物のデザインに多額の費用をかけにくい個人事業主らからの依頼は料金的に折り合わないこともあり、「デザインは自前でやるから、印刷だけやってほしい」との相談や要望も多く寄せられた。「需要に応えられず、質の高い印刷物を作る可能性をつぶしてしまっていたことがもったいないと思っていた」と太田さん。自分の仕事にも使えることもあり、印刷関連機材をそろえて店舗型の簡易印刷所を設けた。

用紙の違いでも広がる表現の幅

高品位出力は印刷する用紙が選べ、厚さやコーティング、原料の違いや半透明の紙など約30種類の中から選択できる。「紙の違いでいろんな表情が印刷物に出る」と太田さん。
幾つかのショップカードを手に取ってみた。文字の配置やデザインの違いは一目瞭然。厚さや手触り、光沢などが違うそれぞれの紙は、まだ知らぬ店の雰囲気や情報を伝え、深層心理に訴えかけているようにも感じる。「デジタルはビジュアルだけでしか表現できないが、紙の印刷物は素材感も含めて与える印象をさまざまに変えられる。デリケートな表現もたくさんでき、幅が広がる」という。
裁断だけ、スキャニングだけといった利用も可能。メニューの組み合わせ次第でフォトブックやカレンダーなど個性的な印刷物が作れる。太田さんは「お客さんに印刷の可能性に気付いてもらえたらうれしい」と期待する。
午前10時~午後5時。水、土、日曜、祝日は定休。℡050・1340・0718