松本の山本さん「社会福祉辞典」編さん

歴史なども理解しやすく工夫

【コミュニティ】地域における共同社会、共同体。最近では福祉用語として地域福祉計画等に使われる。ヨーロッパではコミュニティの再生で、地域づくりが進んでいる。日本でも同様に、地域福祉計画に生かされている。

松本市社会福祉協議会で事務局次長を務めた山本雄二さん(75、同市城西1)が、社会福祉関連の用語などを解説する「社会福祉辞典」の編さんに取り組んでいる。
社協を退職した後も地域の民生委員を務めるなど、長年にわたり社会福祉の道を歩んできた山本さん。その集大成として「何かできないか」と考え、「自分のようなアナログ人間でも調べやすいように」と、辞典づくりにたどり着いた。80歳を迎える5年後の完成を目指して、地道な作業が続く。

【コンプレックス】精神分析の概念。無意識下で自我を驚かすような心的内容が絡み合って構成されること。

普段、何げなく使っている言葉でも、あらためて説明しようとすると難しい。山本雄二さんは、編さんを手掛けている社会福祉辞典で、用語の意味だけでなく、背景、歴史なども盛り込み、理解しやすいよう工夫している。

社協に37年勤務 地域福祉現場で

山本さんが福祉の道を志したのは高校生時代。山好きで、同級生の弟と生坂村の山に登った際に彼が足を滑らせ転落。命は奇跡的に助かったが、10日ほど意識不明になる大けがを負った。「自責の念に駆られ出口を探していた時、知り合いの保健師のアドバイスを受け、障害者の福祉施設に目を向けるようになった」と山本さん。
知人から旧三郷村(現・安曇野市三郷)のアルプス学園を紹介してもらい、慰問活動を始めた。文通相手で、後に全国民生委員児童委員連合会長になる福祉施設運営者の荒崎良道さん(金沢市)から「今後のためにも福祉をしっかり勉強したらどうか」と助言を受け、日本福祉大(愛知県)へ進学。卒業後、松本市社会福祉協議会に就職した。「将来は福祉の時代が来る」との展望もあった。
同市は、高齢者の生きがいづくりや居場所づくりの拠点に|と、各地区に福祉ひろばの設置を推進。山本さんも隣近所の見守り態勢の基盤づくりなどに尽力した。
市社協に37年間籍を置き、地域福祉を市民と一緒につくりあげてきたと自負する山本さん。この間、社会福祉をめぐる考え方や環境も大きく変化した。
福祉に対するかつての「施し」といったイメージは薄まり、「権利」の意識が浸透。1989(平成元)年に策定された「高齢者保健福祉推進10カ年戦略(ゴールドプラン)」は、ホームヘルパー、デイサービス、ショートステイなどの充実を図り、施設から在宅、地域へ─の取り組みを進める大きな一歩となった。
社会福祉の意識や制度の変革と共に歩んできた山本さんは、2018年から2年間、高齢者福祉の手記「松本市における老人問題と高齢者福祉老人問題の萌芽から現在まで」を執筆。「社会福祉辞典」は、これに続く記録としての意味合いもある。

5年後完成目標 若者のよすがに

完成目標とする5年後は、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる25年に当たる。社会福祉の重要性はますます高まり、少子化と合わせて、介護、医療、社会保障など取り組むべきさまざまな課題もさらに顕在化する。
そんな時代に、社会福祉を志す若者たちのよすがになれば─。介護職唯一の国家資格である介護福祉士の取得を目指す高校生、大学生らの参考になり、少しでも社会福祉の人材を増やすことにつながればいい─。山本さんにはそんな思いがある。
掲載する用語選びを終え、あいうえお順に「さ行」まで編さんをほぼ終えた。「用語の解説だけでなく、福祉の歴史も分かるようにしたつもり。これをしっかり読み、理解すれば、介護福祉士の試験に合格する力が付くレベルにするつもり」。団塊の世代より一足先に後期高齢者となった山本さんの奮闘は、まだ道半ばだ。