「育児も仕事も」こだわり奮闘 元水泳選手・中村さん

「自分が望む形」にたどり着き

かつて世界選手権にも出場するなど競泳のトップアスリートとして活躍した中村沙耶香さん(32、安曇野市堀金)。現在は、結婚相談所「ベストパートナー」(塩尻市広丘吉田)の相談員として働く1児の母だ。
昨年11月に出産。子どもがある程度大きくなるまでは仕事より育児を優先する道を選ぶ人も多い中、出産から2カ月後に「育児も仕事も同時に」という自分が望む形の職場に出合った。
知り合いだったベストパートナーの藤森昇社長(62)に相談したことが大きな転機となった。還暦を過ぎ、同相談所の経営を引き継いでくれる後継者を探していた藤森さん。2人の思いが重なり、中村さんは子ども同伴の職場で「将来の社長」含みの仕事に励んでいる。

重度のつわりにやむを得ず退職

中村沙耶香さんは5歳で水泳を始め、小学生の時に著名な大阪のクラブに誘われ、単身大阪へ。都内の高校に進み、3年の時、平泳ぎで世界水泳に出場した。日体大卒業後は信州に戻り、教員を6年務めた後に大手結婚相談所で3年間、相談員として働いた。
昨年4月、中学校で不登校児のサポートなどをする教員として採用されたが、同時に妊娠が判明。重度のつわりに苦しみ、医師に絶対安静を告げられ、転職してすぐ仕事を休まざるを得なくなった。学校からは早期復帰を求められたが体調は回復せず、翌5月にやむなく退職した。
「赤ちゃんは無事に育つか」「転職時期を誤ったのでは」。中村さんは、安静生活で天井を見つめながら考えた。さらに退職したことで「社会と絶たれてしまった」という不安にもさいなまれた。
同年11月に長男の充玖(みつき)ちゃんを無事出産。2カ月後にベストパートナーの藤森昇社長に相談したところ、思いがけない提案をされた。「すぐにでもうちで働いてほしい。お子さんも連れて出勤してはどうか」
藤森さんは同社を開業して10年。1人で運営を担ってきたが、そろそろ後継者を|と考えていた矢先、中村さんから相談を受けた。
「小さな所帯のここなら、2人で互いをカバーしながら子育てとの両立も可能。子どもも時間がたてば大きくなり、そのうち手がかからなくなる」と考え、後継者含みで採用を決定。中村さんは生後4カ月の充玖ちゃんの世話をしながら働きだした。
中村さんを雇うに当たり、藤森さんは事務所の一角に授乳などができるキッズスペースを設置した。現在は週3日の勤務。充玖ちゃんを車に乗せ、安曇野市堀金から塩尻市まで長距離通勤の日々が始まった。

社長と夫が協力思いあきらめず

初めてのことばかりで入社当初は緊張していた中村さん。意外にも充玖ちゃんは母との出勤を楽しんでいる様子。中村さんと一緒にいろいろな人と会うせいか、人見知りもなく「今では出勤時刻になると『そろそろ行くよ』というような顔をするんです」と笑う。
夫の正志さん(40、会社員)の協力も大きな助けになっている。正志さんの仕事が休みの土、日曜、祝日には一緒に出勤し、事務所内で充玖ちゃんの世話をしている。「男女関係なく社会に出て仕事したり育児をしたりする時代。やりたいことができるよう2人で考えた。責任感が強く、真剣に仕事に取り組んでいる妻を支えたい」と正志さん。
沙耶香さんは、仕事でもプライベートでも「自身の思いを開示すること」がモットー。今の働き方も、夫や藤森さんに素直な思いをぶつけたからこそ実現した。
偶然とはいえ、条件に合った職場が見つかり、夫の理解と支えも得て「育児も仕事も同時に」という「自分が望む形」にたどり着いた沙耶香さん。これから結婚して家庭を持ちたい|と相談所を訪れる人たちには「自分が望む形」の環境が見つかるよう、自身の経験も生かして勇気づけやアドバイスをしていきたいと考えている。