認知症のケア技法「ユマニチュード」とは?

フランスで生まれた認知症のケア技法「ユマニチュード(Humanitude)」を知っていますか?患者と絆を築くことでスムーズなケアにつなげる最先端の技法で、患者によっては驚くほどの変化があるそうです。この技法を介護の現場に取り入れている塩尻市宗賀の社会福祉法人「平成会」の取り組みを交えながら紹介します。

「大切さ」を伝える

昨夏設立された日本ユマニチュード学会のホームページによると、ユマニチュードは「人間らしさを取り戻す」の意味を持つフランス語の造語。
この言葉に凝縮されるように、ユマニチュードは認知症患者に「あなたは人間であり、大切な存在だ」と伝え続けることを根本とし、それを実現するための約150のケア技法を提案しています。
ユマニチュードを日本に紹介した本田美和子医師が総合内科医長を務める国立病院機構東京医療センターが、家庭での実践例をユーチューブで公開しているので参考になります(「高齢者ケア研究室」で検索)。
動画では一例として、なかなかご飯を食べてくれない認知症の父親への接し方を紹介しています。
「早く食べて」と、きつい言い方をしたり、強引にご飯を口へ持っていったりすることで父親を怒らせ、食事が進まないことはありませんか?それは、父親側の視点に立てば、突然声を掛けられ、怒られ、口に何かを入れられたということ。
ユマニチュードではまず、正面からゆっくり父親に近づき、目を合わせ、誰かが話し掛けていることを認識してもらう。話し掛けるときはいきなり本題に入らず、笑顔で、柔らかいトーンで、ゆっくりと話す。
話しているときは手で優しく、ゆっくりと、広い面積で父親に触れ、「あなたを大切にしている」ということを言外に伝える。
相手とコミュニケーションができる状態になってから食事の提案。食べ物が何かを伝え、目の前に持っていって認識してもらい、食べさせる。その場を離れるときは、一緒に楽しい時間が過ごせたことの喜びや感謝を伝える。
このように、「あなたは人間であり、家族であり、友人。あなたのことを大切に思っている」ということを、「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの動作と、5つのステップ((1)出会いの準備(2)ケアの準備(3)知覚の連結(4)感情の固定(5)再会の約束)を通じて伝え、患者との絆を築いていきます。
どれも特別な技法ではありませんが、患者への近づき方、話すときの顔の距離、触れ方、ケアの一連の手順など、理論に裏付けされ細部にわたるため、そのマニュアルは厳しく管理。日本では、仏国「SASユマニチュード社」から国内で唯一、正規事業ライセンスを与えられているエクサウィザーズ社(東京)が開く正規研修会への参加を通じて、初めてその詳細を知ることができます。

松本・諏訪地方を中心に23の福祉施設を運営する平成会は、エクサウィザーズと業務提携し、2018~19年度に正規研修会を開催するなど普及に力を入れ始めました。
既に職員約30人も研修を受け、現場でユマニチュードを実践。早出徳一常務理事(51)は「怒りっぽい方が穏やかになるなど、利用者の様子が明らかに変わる。入浴を提案したときにすんなり応じていただけるようになるなど、ケアをスムーズに受け入れてもらえる」と、手応えを感じています。
介護をする人は皆、相手のことを大切に思って日々ケアをしています。ただ、相手を上から見下ろしたり、腕を上からつかんだりなど、無意識のうちに取る行動が、意図せず相手にマイナスのメッセージを送っていることがある。「そのギャップを埋めてくれるのがユマニチュード。認知症の患者からも、介護する家族からも多くの笑顔が生まれ、生活の質が上がる」と早出常務理事は力を込めました。