【像えとせとら】「ゆとりの街松本」少年像(松本市美須々)

真剣勝負の場で のんびりあくび

松本市総合体育館の北側の植栽の木陰に、ひっそりとたたずむ。高さは40センチほど。腰に手を当てながら大きな口を開け、サロペット風の半ズボンの肩ひもの1本は、肩から少しずり落ちている。あくびをしているのか、かなりの脱力感だ。
作者も、いつ建てられたかも分からない。土台の表と裏に刻まれた「ゆとりの街松本」「長野県労働基準局長野県労働基準協会連合会」の文字。同連合会(長野市)専務理事の佐々木弘久さん(65)によると、国が労働時間短縮を啓発しようと、1990~96年度に行った「ゆとり創造宣言都市奨励事業」の記念像という。
事業は全国の120市を指定し、県内では松本、大町、飯田が選ばれた。「像はその際に寄贈したもの」と佐々木さん。それぞれデザインが異なり、飯田市のは樹木のようなモニュメントだそうだ。
なぜこの場所に?市に資料はなく、職員OBの記憶では、総合体育館が完成(91年)した頃からあったという。「寄贈を受けた像の置き場所として、新しい施設が選ばれたのでは」(市スポーツ推進課)という。
ゆとりの象徴とはいえ、数々の勝負や演奏会が繰り広げられる体育館とキッセイ文化ホールの一角で、30年以上もあくびをし続ける少年がいたなんて─。「あっ、見つかっちゃった?」。そんな声が聞こえてきそうだ。