2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

「在宅ワーカー」養成 講座開始から4年の集大成

関心高い半面、独立後に課題も

新型コロナウイルスの拡大で、一気に広まった「在宅ワーク」。インターネットを活用し、オフィスに行かなくてもできる働き方の可能性や幅に気付いた人や組織も多い。
このタイミングで、松本市の「在宅ワーカー養成プログラム」が今月開講する。2016年の開始以来、ワーカーの裾野を広げてきた同講座。これまでの集大成として、その内容を大きく変える。
その一つが、コロナ禍に伴う新しい生活様式に沿った完全オンラインでの受講。もう一つが、現代社会でより求められる人材の育成を視野にしたウェブデザインに特化したプログラムだ。
在宅ワークに対する認知度や需要の高まりを背景に、幅広く実践的なスキルを身に付けてもらおう|と、スタッフは試行錯誤を重ねている。

収入は?経験は?理想の働き方求め

「在宅ワークって、どれくらいの収入になるんですか」「まったく未経験でも勉強についていけますか」
8月27日、松本市内で「第8期在宅ワーカー養成プログラム」の説明会が開かれた。33人が熱心に耳を傾け、在宅ワークへの関心の高さがうかがえた。
「先輩ワーカー」が理想と現実や、始めてみて良かった点などを紹介。講師でもある久保一恵さん(37、松本市)は「自分らしい理想の働き方を選択するきっかけになれば」。日下部徳恵さん(44、安曇野市)は「一生懸命集中して勉強する時間もまた財産。ぜひ一歩を踏み出して」とエールを送った。

IT学ぶ3コース今期講座ウェブで

同プログラムは、松本市の「コワーキングスペース活用型人材育成事業」の目玉事業として2016年秋に第1期がスタートした。「ホームページ制作」など3コースを設け、1期は約4カ月。在宅で働くための基礎知識となるパソコンやフリーツールの使い方から具体的な技術まで、先輩ワーカーとともに学ぶ。
今回の第8期(受講生の募集は既に終了)は、期間を約半年、計20回に拡大。ウェブサイトの見た目を考えて制作する「デザイン」と、プログラミング言語(コード)を打ち込む「コーディング」の一連の流れを学び、幅広い実践力を身に付ける。
市から事業を受託するクラウドット(大手1)の中山拓郎社長は「ウェブの世界は日々どんどん変わる分野。経験値よりも新しい知識や技術に対応する柔軟性が重要」とし、未経験者の挑戦を歓迎。「東京一極集中ではなく、もっと地方にIT(情報技術)の仕事を持ってくるためにも、幅広い知識がある人材を地方で育てる必要がある」と話す。
今回、講座はすべてビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使ったオンラインで実施することが急きょ決定。画面を通して実際の作業をどう分かりやすく具体的に説明するか、受講者のモチベーションをどう維持していくかなども課題となり、スタッフは対応に追われている。
第6期からデザイン講師を務める久保さんは「一体感をどう出すか。作業の部分はチーム分けし、細かくフォローしていくなど、臨機応変に展開していきたい」。一方で、オンラインでの受講を通じて「主体的に学び、ネット等で調べて問題を解決していくという在宅ワーク本来の厳しさを知り、それを乗り越える力も付けてもらえたら」と期待する。

案件増も受注に難官民で環境整備を

過去の受講生の多くは、育児中の働き方を模索する女性たち。100人を超える卒業生の中には、念願の在宅ワーカーとして、子育てと両立しながらデザインやウェブ制作などを仕事にする人も増えてきた。
在宅ワーカー育成に一定の成果を出してきた同講座だが、実際の仕事の確保を増やしていくという面では課題も抱える。
仕事を依頼したい企業と受けたい人をインターネットで結び付ける「クラウドソーシング」の普及で絶対的な仕事数は増えているものの、実績がない初心者が参入するにはハードルも高く、単価も安い。中山社長は「地元企業もこれからはアウトソーシング(外注)を進めるなど、人材と仕事が地域で循環するシステムを作っていけるといい」とし、行政も一体となった地元での環境整備の必要性を訴えている。