強い意志で前進 家族と100歳を

二人三脚で乗り越え前向きに

昨年、医師から「このままだと年内まで」と余命宣告も受けた。「100歳まで生きたい」。強い意志と妻、娘の支えでリハビリに取り組み、伝い歩きができるまでに回復した。
安曇野市穂高有明の平林寅男さん(93)は昨年11月、誤嚥(ごえん)性肺炎で同市内の病院に入院した。対応などを話し合うカンファレンスで深刻な状況を知った長女の林裕美さん(51)は平林さんに問い掛けた。「幾つまで生きたい?」。返ってきた答えが「100歳まで」だった。
妻の正江さん(89)と一緒に健康づくりに励む寅男さん。あきらめず、体力を付けて、歩いたり、大好きなチョコレートを食べたりしたい─。入院から10カ月、家族の支えを受けながら目標に近づこうと歩を進めている。

病気で苦難続き 懸命にリハビリ

平林寅男さんは1926(大正15)年生まれ。10月10日で満94歳になる。妻正江さんと合わせると、もうすぐ183歳というご長寿夫婦だ。
数年前、病気で失明した寅男さん。そして今回の誤嚥性肺炎。苦難が続く。
当面、自分の口から食べることができなくなり、入院当初は点滴での栄養摂取に。このままだと年を越せるかどうか─。医師からそう告げられた林裕美さんは医師と相談、まずは栄養摂取を点滴から胃ろうに切り替えた。
この対応が奏功し、1月に退院。だが、カンファレンスで「寝たきりになるかも」と指摘された。健康なライフスタイルを送るために助言・指導するウエルネスコーチでもある林さん。「寝たきりになんてさせない」。大豆タンパクなどが入ったスムージーも取り入れながら、体を少しずつ動かして体力の回復を図った。
退院から1カ月。寅男さんは林さんが差し伸べた手につかまり、車いすから立ち上がって5メートルほどを歩けるように。「退院時は、うまく座れないほどだったのに、とにかくびっくりした」と林さん。
ベッドで足をストレッチした後は自分で座ってつかまり立ちし、廊下を歩くのがリハビリの基本メニュー。補助棒を手に、つま先立ちの練習も。全盲ということもあり、歩けても伝い歩きが基本となるが、玄関まで行き、デイサービスに出掛けられるまでになった。
ただ、胃ろうによる栄養摂取はまだ続いている。「飼われているみたいだな」。寅男さんは時折、ふとそう思う。伝い歩きができるようになり、今後の目標は自らの足だけで立って歩くことと、口から食べることだ。

食生活にも変化 家族の支え力に

正江さんも食生活を変え、寅男さんが飲むスムージーを取り入れた。砂糖を入れて甘くしたコーヒーが大好きだったが、今では料理にもほとんど砂糖を使わない。食生活を変えただけで杖なしで歩けるようになり、血液をさらさらにする薬も不要になった。
「生きがいは、畑仕事」と正江さん。家の裏にある400平方メートルの畑で、野菜を育てている。「育てて収穫するだけでなく、食べる楽しみもある」。その畑は寅男さんが失明する前に3年かけて開墾した。
寅男さんについては「曲がったことが大嫌いで、穏やか。目が見えなくなることも、自分の運命として静かに受け入れた」。寅男さんの入院を機に自らの健康にも気を配り、リハビリに励む夫をそばで優しく見守る。「来年の春になったら外を歩けるかな」(寅男さん)。「何でもおいしく食べられて幸せ」(正江さん)。2人とも常に前向きだ。
結婚して62年。大変なことも多かったが、二人三脚で乗り越えてきた。「2人の姿を見て、大好きな人と寄り添って生きていく素晴らしさを学んだ」と林さん。寅男さんが100歳を迎える2026年を、夫婦そろって健康で迎えたい─。2人の目標に向けて、林さんも両親をサポートしていく。