高齢者の転倒リスク対策

新型コロナウイルス感染防止対策で、外出を自粛するなど活動量が減ったことで身体機能が衰え、転倒、骨折につながる高齢者が増えています。「自分は大丈夫」と、思っていても、思わぬところで転倒し寝たきりになってしまう危険性も。日常生活での注意点や転倒しない体づくりについて松本市立病院(波田)主任理学療法士の中村慶佑さん(35)に聞きました。

環境・食事・運動─意識高めて

厚生労働省の統計によると高齢者が要介護になる原因のうち、骨折・転倒は12.5%で4番目に多いです。これまで転倒は事故、骨折は骨粗しょう症によるものと捉えられてきましたが、加齢による衰えなど老年症候群が大きく関わっています。自分のリスクを知り予防していくことが大切です。
転倒で骨折しやすい部位は、肩、手首、腰、大腿(だいたい)骨近位部の4カ所。転倒した方向が側方だと手首や肩、大腿骨近位部、後方だと腰、前方だと手や膝などが多いです。
骨折後の影響として特に大腿骨近位部の場合、骨折後1年の時点で日常動作が自立している割合は50%。死亡率は手術後1年で10%前後という報告もあります。
転倒しやすくなる原因として、バランス感覚、筋力(特に下肢)、視力の衰えや、足首の関節が硬くなって姿勢の立て直しが困難になるなど、加齢によるものをはじめ、家の中が暗い、廊下や玄関、居間などによけて通らなくてはいけないものがあるなど環境要因があります。また、1日に5種類以上の薬を飲んでいると、薬の副作用によるふらつきや目まいで転びやすくなる場合もあります。
別表の「転倒リスク評価表(厚生労働省)」を参考に自分の危険度をチェックしてみましょう。点数が多いほど転びやすく、10点以上は転倒リスクが高まるといわれています。危険なところが分かれば対策もしやすいです。


例えば、環境要因であれば体の幅以上の余裕があるように通路、室内を整頓するといいでしょう。予期せぬものが置いてあると夜間などつまづきやすい。居間や台所、浴室のマットが浮いていないかも注意しましょう。
薬の場合は特に、精神や神経に作用する薬は転びやすくなるといわれます。減らせるか他に替わる薬はないかなど主治医と相談してみてください。
骨折しない体をつくるためには食事と運動が大切。下肢の筋肉量は20代ごろから、全身の筋肉量は50~60代から減少し始めますので、若年、中年期から運動意識を高めることが重要です。
高齢者でも手遅れではなく、複合的な運動(歩行、バランス、筋力トレーング)で転倒リスクを約30%減らすことができたというデータもあります。筋力強化にはスクワットがお勧めです。また、とっさの時に足を1歩、出せることで転倒を予防したり、転んでも衝撃を緩和したりすることができます。そのためのバランストレーニングを紹介するので、やってみてください。
食事は、タンパク質、カルシウム、ビタミンDを取ることを意識しましょう。特にビタミンDは筋肉や骨の合成を促し、転倒リスクを減らすともいわれています。食品ではサケ、ちりめんじゃこ、サンマ、キクラゲなどに多く含まれるほか、10~15分の日光浴をすると作られます。食事について持病がある人は主治医に相談してください。

【バランストレーニング】(体は真っすぐを意識)
★前後へのステップ
立った状態から片足を大きく前へ1歩踏み出し戻す。後ろにも踏み出し戻す。これを1セットとし、左右の足各5セット。
★左右へのステップ
立った状態から片足を大きく外側へ1歩踏み出し戻す。左右各5回。
★片足立ち
片足を床から10㌢ほど上げて10秒間保持。左右各2セット。机を支えにするなど、よろけても安全な方法で。慣れてきたら座布団の上でやってみましょう。