コロナ禍で実践力どう補う? 生徒と教員試行錯誤

新型コロナウイルスの影響で、福祉施設や企業などで学生・生徒の各種実習の受け入れが困難になる中、松本医療福祉専門学校(松本市渚2)介護福祉学科の2年生14人は9月、介護実習の代わりとなる校内演習に取り組んだ。現場でしか得られない経験をどうやって補い、実践力を養うか―。生徒と教員が試行錯誤している。

施設利用者が作る製品想定

「まじ、ミシン無理なんだけどー」と教室から声が聞こえ、別の教室からは甘い焼き菓子の香りが。介護福祉士を目指す2年生は、例年なら6月に障害者就労支援施設などで3週間の介護実習を行うが、今年は夏以降も実施のめどが立たず中止に。代わりの実習として、施設(B型事業所)利用者が新たな製品として売り出すことを想定した、エコバッグと菓子を試作した。
利用者は19歳の女性で知的障害があり、時間の把握と金銭の計算ができず、部品の組み立てや雑巾縫い、焼き芋の袋作りなどを行っている設定。「自立して生活できる力を身に付けてほしい」という家族の願いを受けて、生徒が新たな商品作りを支援する―という筋書きだ。
エコバッグは、レジ袋有料化で需要を見込み、手拭いをミシンで縫って簡単にできるものを試作した。「商品として売るからには、しっかりしたものを」と張り切るのは春日菜津美さん(19、同市)。
介護福祉士として働く母の背中を見て育ち、同じ道を進むと決めた。1年生の時、高齢者施設で取り組んだ介護実習で志を強くしたといい、「今年は中止になり残念」。現場での実習の経験不足は不安だが、「今やれることを精いっぱいやり、支援が必要な人の心に寄り添える介護福祉士になりたい」と前を向く。

実習ないから学べたことも

菓子は、3種類の味の型抜きクッキーを試作した。実際に作る利用者が分かるようにと、作業の一つずつをデジカメで撮影。中嶋葵さん(19、安曇野市)は「介護福祉士を目指してこの学校に来たのに、まさかクッキー作りをするとは」と言いながらも楽しそう。
想定した利用者の女性は、数字や計算が苦手。小麦粉を分量通りに計ってもらうにはどうしたらいいか?エコバッグの試作でも採寸方法のあり方を見直すなど、生徒たちはグループで検討を重ねた。
同校の教員で介護福祉士・相談支援専門員の深澤栄美子さんは「その人の障害を理解し、何ができて何ができないのか、支援者としてどんな手助けができるのかを常に考えて」と助言する。
大学卒業後に県内企業に就職したが、自分がやりたい福祉を学ぼうと、同校に入学し直した三木亮太さん(24、松本市)は「コロナ禍で実習ができない分、逆に学べたことも大きい。この経験を将来に生かし、社会に役立つ人材になりたい」と力を込めた。