信州に美食をシンシュラン

松本平の飲食店経営者らが結成

会員制美食倶楽部の発祥の地とされるスペインのリゾート地サンセバスチャン。その地では、料理店がそれぞれの「自慢の味」を秘蔵にせず、レシピを公開したり、料理人が一緒に研究したりして、互いに高め合う取り組みをしている。
松本平でもそんな取り組みができないだろうか─。そう考えた飲食店経営者や食材の生産者、消費者18人が集まり「シンシュラン」を結成した。信州と、著名なグルメガイドブック「ミシュランガイド」から命名。業態の枠を超えて協力し、松本平の「食」の盛り上げに一役買う。
取り組みの第1弾として独創的な「シンシュランおやき」を開発し、12月に売り出す。その後、徐々にレシピ交換など活動を広げていきたい考えだ。

自慢の味を公開「意識」を高めて

シンシュラン結成のヒントを得たスペインのサンセバスチャンは「美食の街」として知られる。「飲食店が互いにレシピを公開し、技術を教え合う。そういう街が素晴らしいと思った」。発案者で、そば処(どころ)木鶏(もっけい、山形村)の店主、塙和貴さん(38)はそう話す。1月には、メンバー10人で現地に視察に出かけ、肌でその食文化を感じてきた。
3月には報告会を開催。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食業が休業を強いられ、出はなをくじかれた。それでも「松本平を美食の街にしたい」との思いは強かった。
6月、サンセバスチャンの方式に、信州らしさと自分たちらしさというエッセンスを加えたシンシュランの立ち上げにこぎ着けた。星の数で格付けするミシュランガイドにちなんだのは「活動を通して一人一人が輝く星になれるように」との願いも込めている。
活動拠点は、松本市神林に設けた約110平方メートルの「セントラルキッチン」。おやきなどを作っていた「おふくろ工房」の後を利用した。調理室を3室備え、低温調理器や大型冷凍冷蔵庫など、個々では買えない高額な調理器具もお金を出し合って購入した。
メンバーのうち、飲食店は、そば、フレンチ、イタリアン、中華、ラーメン、洋菓子、和菓子と、多岐にわたる。生産者も巻き込んだのは、その思いを料理に盛り込み、信州の食材のPRにつなげたいと考えたからだ。異なる業種の意見に耳を傾けることで新しい発想が生まれレベルアップにつながる─と、地元や東京の消費者もメンバーに名を連ねる。
シンシュランの代表で歯科医院院長の犬飼健さん(51、松本市蟻ケ崎5)は「地域を盛り上げるスキルを持っている人もいる。いろいろな人が加わることで、幅広い視点でものを見ることができる」と話す。

第一弾のおやき12月に5種発売

第1弾の商品「シンシュランおやき」作りに挑戦するのは、フランス料理の「ラトリエ・スズキ」(松本市大手4)、和食の「こよみ料理鼎(かなえ)」(同市島内)、ラーメンの「とり麺や五色」(同市白板1)、和菓子の「御菓子処藤むら」(同市中央2)、中華料理の「間道」(同市深志2)の5店舗。
9月末、ラトリエ・スズキで打ち合わせ会を開催。具材には、安曇野放牧豚や信州ハーブ鶏、信州サーモン、鹿肉、エゴマの実など県産の食材を使う予定で、セントラルキッチンで一緒に作り真空パック詰めにする。12月に5種をセット(1500円)で発売し、各店舗やオンラインショップでも販売する計画だ。
6日にはセントラルキッチンで、おふくろ工房で調理をしていた「おやきのスペシャリスト」との交流会を開き、独創的なおやきの開発に向け、知恵を出し合う。

おやきの後は、協力しておせち料理を作ったりコース料理を開発したりといった活動を想定しているシンシュラン。セントラルキッチンでそれぞれの持つレシピを公開し、互いの料理に反映させることで、地域の食のレベルの底上げを図る。そして「おいしい食べ物のある街」として松本平の評価を高めていくのが目標だ。
地域全体を食で盛り上げたい ─ とつながった仲間たちの結束は強い。「日本一、いや、世界一の美食の街にするぞ!」。メンバーたちから、そんな熱い思いが伝わってきた。