【なないろキッズ】 #47 必要な時は薬も上手に

発達障害のお子さんを診療する過程で、時には薬物療法を行うことがあります。一般的に成長過程の子どもに精神科的な薬を使うことには、抵抗感や、不安、罪悪感を抱かれる保護者も少なくないと思います。
発達障害の診療に薬物療法は必須ではありません。でも上手に使うと、子ども本人が抱える困難さを軽減して生活がしやすくなり、経験の幅を広げることで、健やかな心身の成長につながることもあります。
発達障害のお子さんに使う薬としては(1)元々の特性から来る困難さを軽減する薬(ADHD=注意欠如・多動症に対する多動・不注意・衝動性を軽減する薬など)(2)発達の偏りがあるお子さんに生じやすい症状を緩和する薬(睡眠リズムを整える薬、不安・いらいら感を軽減する薬など)(3)2次的に起きた併発症に対する薬(うつ状態に対する抗うつ薬など)があります。
例えば、ADHDのお子さんが、多動・衝動性が強くて学校の授業も受けられず学習が遅れている、叱られることが多くて反発心も強まり衝動的に先生や友達に手が出てしまう、そのことを本人も後悔しているのにいざという時は我慢ができない…といった悪循環の状況が続く場合に、ADHDの症状を抑える薬を使うことで、衝動的に手が出ることが減り友人関係がスムーズになり、落ち着いた環境なら学習に集中でき、良い行動が増え、周囲からも認められ、自信を付けることができる|といったことが期待できるかもしれません。
といっても、発達障害診療で、薬物療法が果たす役割は大きくはなく、本人の特性に合った環境調整をしたり、周囲の対応を工夫したりすることで、本人が自律して行動するスキルを身に付け、自分に合った環境を選んでいけるようになることを支えるのが、より大切です。このことを忘れずに、薬「も」必要な時にはうまく使えるといいですね。