【ビジネスの明日】#17 タカノ社長 高野泰大さん

精密板金加工・組み立てを手掛ける松本市和田のタカノ。一般になじみが薄い金属加工だが、製造する部品や装置は、医療機器やスマートフォンの製造装置に使われるなど、私たちの生活を支える。社長の高野泰大さんは、価格競争が激化する中、品質や美しさを徹底した製品と、時代の変化に即したニーズへの対応で勝負を挑む。

品質や美しさ徹底した製品

鉄やアルミニウムなど金属板を切断し、曲げ、溶接してさまざまな形の部品や製品を作る「精密板金」。1972年に岡谷市で現会長の父・裕二郎さんが創業した製缶・設備工事の会社を起点に、板金加工事業を拡大してきた。90年、より広い土地を求め、分譲を始めたばかりの松本臨空工業団地の現在地に移転。現在団地内に2つの工場を持つ。
「金属加工業の中でも、うちは作業工程が特に多い」と自認するように、多種多様な形状の金属製品を生産。月1万種類ほどを生産するが、1種類に8個というような注文にも応える「多品種少量生産」だ。
製品は国内のメーカー約150社に出荷、液晶パネルやスマートフォンのメモリーの製造装置に形を変え、その9割を中国に輸出する。
新型コロナの影響で一時的に売り上げが落ちたが、それよりも「米中半導体貿易摩擦など、世界的な経済情勢に受注が左右されるため、先行きは不透明。今は耐える時期」と、表情を引き締める。

大学卒業後、タカノに入社し、現場での金属の切断作業からキャリアをスタート。「当時は働くことが美徳で、工場の床で寝ることもあった」。その体験から工場独特の体質を改善するため、機械化などの設備投資や労働条件の改善、職場環境の美化に取り組んだ。
特に自信を持つのが「美しい製品、きれいな工場」。表面に傷が付きやすい金属製品は、各工程で担当者が丁寧に加工。傷がなく輝いた製品作りを実現、他社との区別化にもつなげた。工場も整然としたクリーンな環境で、工場見学の希望も相次いでいる。
また、125人の従業員の平均年齢は、35歳程度と若く、一から板金を始める人がほとんど。誰がやっても高品質で均一な製品を作れるよう、機械化を進め、完全週休2日制を導入するなど働き方改革にも力を入れてきた。
し烈な価格競争や国際的な経済情勢の影響で、厳しい状況が見込まれる中、いち早く金属3Dプリンター事業にも乗り出すなど先を見据える。「いい仕事をして、お客さんにも結果を出してもらえることが一番の励み」と自らを奮い立たせる。

【プロフィル】たかの・やすひろ岡谷市出身。東海大理学部卒業後、2003年タカノ入社。13年に社長就任。松本市在住。40歳。