コロナ禍で客足減「森のおうち」ファンや作家ら支援の輪

今年で開館27年目を迎えた安曇野市穂高有明の絵本美術館「森のおうち」。新型コロナウイルスの感染拡大で客足が落ち、一時は存続も危ぶまれた。
その直後から、窮地を救おう―と同館のファンや絵本作家らが立ち上がった。日ごろ同館館長の酒井倫子さん(82)と語りや朗読に親しんでいる仲間が、支援金集めに奔走。原画の展覧会を毎回、全国に先駆けて同館で開く絵本作家のいせひでこさんも、自作の絵を提供した。
24日には、「あづみ学校」の名で多彩な活動をしている岩隈久さん(69、同市三郷温)が、チャリティーイベント「朗読と音楽の贈り物」を開く。米国の絵本「巨人岩」を、ハープ奏者による生演奏と共に岩隈さん自身が朗読する。

絵本文化発信の場守るため

「森のおうち」館長の酒井倫子さんが危機感を覚えたのは5~6月。3月はほとんど来館者がなく、その後は県の要請でしばらく閉館した。「これからも館を維持していくことができるのか」「絵本文化を大切にする場所と心を失いたくはない」。不安と、維持に向けた思いが交錯した。
そんな時、いち早く立ち上がったのが、20年間、酒井さんと共に朗読や語りで絵本の楽しさを伝えてきた「森のおうちお話しの会」だった。声を上げたのは会員の1人、桑原寿美子さん(松本市)。同館で酒井さんが教えている「楽しみながら学ぶ宮沢賢治の会」や「朗読・語り・紙芝居講座」受講者にも呼び掛け、約30人で「森のおうち絵本文化をつなぐ会」を結成した。
「深みのある文化を発信できる場所として、今後も森のおうちの維持に協力したい」と話す桑原さん。最優先で取り組んだのは支援金集めだ。とりあえず会員から計23万円を集め、4月に館に渡した。その後も有志が動き、現在までに50万円を超す金額を提供している。
館はその後、インターネットで応援団を募集。6月から3000円コース(1年間の入館パスポート付き)、5000円コース(3000円コース+館内カフェのランチ2食付き)、1万円コース(1万1000円のコテージ宿泊補助券付き)の購入を呼び掛けたところ、今までに100人強が応じたという。

人気絵本作家のいせひでこさんは同館と付近の森が大好きで、20年ほど前から頻繁に足を運んでは木々をスケッチしている。そこから「星降る森」「森の女神」などのタブロー(1枚絵)を多く生み出した。絵本の新作ができると、「出発点はいつもここで」と、原画の展覧会を全国に先駆けて開いている。
6月には売上金を同館に寄付するため、3点のタブローを提供。どれも、キャンバスにアクリル絵の具で描いた作品で、額装済み。それぞれタイトルは「サンサーンスのチェロコンチェルト」(90×73センチ)「バッハのアリオーゾ」(同)「音楽」(1メートル四方)。通常60万円を48万円で販売。すでに「音楽」は売約済みだ。

岩隈久さんの「朗読と音楽の贈り物」には、東御市のハープ奏者、竹内遥香さんが協力。「巨人岩」(ナサニエル・ホーソン原作、村岡花子訳)を朗読する。
日本での単行本刊行時(1948年)に表紙絵や挿絵を手掛けた画家、耳野卯三郎の絵をスクリーンに映す演出も。当時の絵は目立ちにくいため、森のおうちスタッフの小林史さんがパステルと色鉛筆で色を付けた。
「こうして美術館と手を携え合うことは私の願いの一つ」と岩隈さん。収益から経費を除いた分を同館に寄付する。24日午後5~6時半。2000円。定員50人。

いせさんのタブローや応援団などについては、同館のホームページでも紹介している。同館 ℡0263・83・5670