2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

引き継いだ銭湯「菊の湯」新装開業

現場責任者に山本ひかるさん
誰もが心安まる場所に

松本市の駅前大通り沿いにある銭湯「菊の湯」(中央3)が15日、新装開業した。利用者の減少などで3代約100年にわたって営んだ一家の手を離れ、通りの向いのブックカフェ「栞日(しおりび)」(菊地徹代表)が経営を引き継いだ。周辺住民や登山客らに愛されてきた湯を担うのは、現場責任者「湯屋チーフ」の山本ひかるさん(27)ら20代のスタッフたちだ。

特技生かし情報発信

改装で2週間休業した後の再開当日。初めて番台に立った山本さんは、開店前から訪れた常連客に「待ち遠しかった」「ここのお湯が一番。残してもらってありがたい」などと話し掛けられ、「これからよろしくお願いします」と頭を下げた。
山本さんは大阪府出身。フリーのイラストレーターとして全国各地の観光地図などを描き、松本もたびたび訪れた。地域活動に携わる父の背中を見て育ち、「自分も『街の生活』に役立つ絵や文章を発信したい」と思っていたところ、栞日が湯屋チーフを公募しているのを知り、応募した。
改装作業から加わり、日々の様子を「湯屋日誌」と題してインスタグラムに投稿するほか、銭湯のイラストを描いたり、菊をモチーフにしたマークを考えたり。「『生活の場』そのものの銭湯で働きながら、住民の一人として、松本の街を描けるようになりたい」という。

20代10人がアルバイト

継承した「菊の湯」では山本さんのほかに、20代の男女10人ほどがアルバイトをする。住廣成実さん(26)さんはチーフに応募した一人で、勤めている京都市の銭湯から“出向”して期間限定で働く。「ブックカフェが銭湯を引き継ぐなんて初めて聞いた。業界内でも注目されている」と住廣さん。
栞日でアルバイトをする学生を通じて声を掛けられ、働くことにした信州大経法学部3年の須甲まな美さん(21)は「ヒノキの床が気持ちよく、シンプルかつセンスがいい雰囲気。若い人も入りやすそう」と、清掃で流した汗を拭った。

“湯つくる”技も学び

浴槽にため、蛇口から出す湯は、ボイラー室での熟練した温度調整が求められる。山本さんは、経営を離れた3代目の宮坂賢吾さん(55)から「お湯はつくるもの」と教えられた。「まずは銭湯の仕事をしっかり学び、誰もが心安まる場所を目指す」。番台から見える“松本の景色”を楽しみにしている。

【菊の湯】
営業は午後2時(日曜日は午前7時)~11時。中学生以上400円、小学生150円、未就学児70円。水曜定休。℡0263・32・1452