【像えとせとら】松本市音楽文化ホール「幻想曲」 (松本市島内)

音色聞こえてきそうな自然な姿

松本市音楽文化ホールのメインホールの入り口にある、フルートを吹く女性の像。静けさと躍動感の両方を感じさせ、清らかな音色が聞こえてきそうだ。作者は2016年に102歳で亡くなった松本市出身の彫刻家、洞澤今朝夫さん。題名は「幻想曲」。数ある楽器と楽曲の中から、なぜフルートと幻想曲が選ばれたのだろう─。
銅像は1995年、ホールの開館10周年を記念し、キッセイ薬品工業(同市)の神澤陸雄社長(現会長)が寄贈した。モデルを務めたのは市出身の双子のフルート奏者、桂綾子さん、聡子さん姉妹だ。
聡子さんによると、洞澤さんの依頼で姉妹が交替でアトリエに通ったという。「自然な姿で音楽が聞こえる作品にしたい」と言われ、姉妹はワルツやメヌエットなどを演奏。洞澤さんが特に気に入ったのが、ドップラー作曲「ハンガリー田園幻想曲」だった。
ちなみに、同ホールの開館記念演奏会(85年10月)は、フルート奏者の金昌国さんが出演。今年10月の35周年記念・東京フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会では、市出身の首席フルート奏者、神田勇哉さん(36)がソリストを務めた。
幼い頃から、この像を眺めていたという神田さん。「フルートが選ばれたのは名誉なこと。松本とフルートは、文化的に重要な結び付きがあるのかもしれませんね」